第6話 ミラージュ様護衛対決①
私が謹慎された三日間で国に何か大きなことが起こったかと聞いてみたら、多くの人がまず城がドッカーンしたことでしょう。
城の中心部、王の間。
魔族のせいでドッカーンされて現在、シェーレ家による設計図復元と国中の建築士が大勢で元通りにすると言う盛大な作業が行われていました。
そのせいで陛下と皇妃様、そして第一皇子様とその護衛以外の皇族の皆様方はそれぞれの護衛を連れて観光に行ったりしているようです。
次に私たちの『神器』と『
どこから情報を手に入れたのか新聞社がそれぞれの『神器』と『
特にミラージュ様、ソレイユ、ルナドール、そして何故か私マニャーナが取り上げられていました。
ミラージュ様は光の精霊王と
ソレイユとルナドールは家紋の双竜と
私は家系に伝わる『神器・アラクネ』を
それらが評価されて『最強の世代』とか言われているらしいです。何言ってんだって思いましたね。
まぁ、とにかくなんやかんやあって、ナノポーラス皇国は今日も平和なのです。
さて、ミラージュ様の一言で始まりました、ミラージュ様護衛対決。
場所はスカーレット家の庭と呼ばれている闘技場。
これを見守るために父様と、スカーレット家当主でありソレイユとルナドールの父であるメテオール公爵が来ていました。
スカーレット家に入るとすぐさまスカーレット家で空いている人たちが出てきて私に頭を下げてきた挙句いろんなものを渡してきた時は驚きでしかありませんでした。一応前にも感謝はされたのですが…それだけでは済まされなかったのでしょう。
なんてったって蝶よ花よと大切に育てられてきた末双子の妹が拉致られかけたのですから。
本来連れ去られた後、魔族が侵入した混乱状態のナノポーラス皇国に隣国が攻めてくるのですが、確かスカーレット家が全員出て1日も経たずに壊滅させたとかファンブックで見た気がします。
家族の愛が凄いですね。
まぁ、未来が変わった今現在はその愛がより一層重くなっているのですが。
「ミラージュ殿下から話は聞いている。だから目一杯やってくれ。ルールは簡単。相手に参ったと言わせたら言いだけの簡単なルールだ。魔法も『神器』もいくらでも使ってくれ!」
「なんでお前はそんなに楽しそうなんだ」
「自分の子供のお祭り騒ぎだぞ?楽しむ他ないだろ。ポラルも子供の成長を見たいだろ?」
「…否定はしない」
「素直になれよなぁ。っと、形式はトーナメント戦な。対戦表はこっちで作っといたからさっさと始めていくぞ。まず1回戦は…オロスとマニャーナだな」
うそ、いきなり初戦ですか…
「よし!昨日の仕返ししてやるぜ!」
殴ったの根に持ってたんですね…お子ちゃまだなぁ…
「大丈夫。オロスはボコボコにしてあげるから」
殺さないように加減するのが苦なんだけどね
「マニャーナもオロスも頑張ってちょうだい。怪我したら私が治してあげるから」
推しに応援された!こりゃぁ頑張るしかないね!
「マニャーナ!手加減なしだぜ!」
「オロスこそ、しっかり盾として踏ん張りなさいよ!」
「ははは、やる気満々だな。良いぜ良いぜ!じゃぁ、初戦開始だ!」
そう、メテオール公爵が手を振り下ろした瞬間、私とオロスの戦いが始まりました。
ゲームでは、魔族戦という機能があり、乙女ゲーとしてだけではなく、アクションゲームとしても楽しめるものでした。まぁ、ターン制だったのでぽちぽち押すだけだったのですが。
でも、今やっているこれは現実です。私の体と、考えで動きます。この世界に生まれて5年間、ベンタブラック家の厳しい暗殺術を学んできた私には勝つ自信がありました。
だから、私はすぐに動けたのです。
まず加速魔法と身体強化魔法を同時に使います。
じゃないと…ほらぁ
「覚悟しろやマニャーナァァ!」
ヒュン!とオロスが瞬間移動レベルで一気に距離を詰めてくるからだ。
インミン家は守りと猫の女神、キュアノスと契約した家系。
『皇族の盾』と呼ばれるように、女神の加護によって防御魔法に特化した一族であり、国の守護神。その分接近戦では体術を使うためこう言った決闘ではタンクよりも完全に近寄ってくる。剣で切ったとしてもそう簡単に傷つかない筋肉を持っているので、思考は防御こそ最大の攻撃。完全に脳筋です。
私は咄嗟に後ろ…に見せかけて右に避け、距離を取る。そして左人差し指をヒョイっと動かしてみる。
「!!くっ」
オロスの右頬に赤い一本線が入り、服が一部破けていく。
彼はすぐに近くに『アラクネ』があると分かって動きを止めました。
いや、多分オロスの『
そしてすぐに対策を考えたのか呪文を唱えた。
「マヒア・エチソ・ルス・メタール・パノプリア」
呪文を呟くと、オロスを光が包むこみ、気がついたら銀色と青色の鎧に包まれていた。
おぉぉ!これぞゲームでも見たインミン家の固有魔法、通称『守護の鎧』か!
ほぉぉぉ!
((こらこら、戦いに集中しなさい。あっちにも私のように守護者いるんだから))
あ、アルバ。えへへ、ゲームが大好きなものでして
((まったく。『アラクネ』が強いからと言って余裕こいてちゃダメよ))
大丈夫だよ。勝負はついているようなものだしね
すると、鎧に身を包んだかと思っていたオロスが魔法を解き、両手をあげて
「負けだ負けだ。どうやったって勝てっこねぇよ」
「そうだな。よくもう負けてるって気づけたな」
あ、父様と公爵…
「俺だってすぐには気づきませんでした。クエイクが教えてくれてなかったら『アラクネ』が首に仕掛けられてるなんて分かりませんでしたから」
そう、実は避ける前に左手の小指にセットしておいた糸をオロスの首に、彼が動いても切れないように巻いておきました。なのでいつでもやれる状態です。ちなみにそれだけではなく、右手の指は全部人間の急所にセッティングしてあります。
『アラクネ』の見えない糸、アルバがいう別名『無色の死神』という名の通り、無色で使用者以外見えない。その上触れたものに、何も触れなかったかのように切れてしまうため敵側が初代ベンタブラック家当主様と『アラクネ』につけた二つ名だそうです。
女神の糸なのになんて物騒な二つ名をつけたんだと思いました。
まぁ、見えないものがあるのに下手に動けませんからね、私だって計画性を持って動いてるんですから。
「さすが俺の娘だな。俺もあれをやられたら死ぬしか方法はないだろう」
「でもこれを知った父様ならどうにかしそうだけど…」
「そりゃぁな。鋼線の扱い方を教えたのは俺だぞ。どうにかできないわけじゃない。お前のくせも把握しているからな。だが…『アラクネ』相手だとどうもな」
「んーでも、多分、まだどうやっても父様には負けると思うな!」
「………」
「?」
父様の大きな手が頭にポンっと乗った。手袋越しではあるけど、暖かい手のひら。
前世ではもう何年も感じられなかった温もり。
ポカポカする。
きゅっと父様の手を握って、見上げた
「ちょっとの間、こうしててほしい!」
それに父様は無言で、でもそのまま手を乗せ続けてくれた。
こうして無事、初戦が終わったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます