第2話『神器』と『魂ノ守護者』
今日の予定
その1『神器』召喚の儀
遥か昔、神の技術を授かった鍛治師が
作り上げた神と同等の力を持つ物。
皇族、または公爵家の血筋でなければ
契約できないという。
その2『
それぞれの家系が契約した守護者。そ
の系統の物と契約をする。魂が通じ合
える存在であり守り合える存在。人間
一人一人は必ず心の中にいる。それを
現実世界に出したのが『
その3 第七皇女・ミラージュ殿下の護衛任命式
第七皇女の護衛を王自ら任命する。
魂の誓いであり、違えば死に至る。
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「これよりナノポーラス皇国第七皇女、ミラージュ=ナノポーラス様の『神器』召喚の儀、及び『
まず初めはミラージュ様から始まる。
ルールとしては皇族が一番最初と決まっていて、あとの公爵家はその年によってローテーションされます。
今年はシェーレ→インミン→ベンタブラック→スカーレットの順番。
ソレイユとルナドールは双子なので兄のソレイユの方が先だったはずです。
で、問題の魔族が現れるのはルナドールの『
でも、今はゲームの中にいるわけだから実際に経験することになります。
ゲームではこのシーンは回想シーンだったのでどうなるか分かりません。なので…今、その情報を持っていて、元プレイヤーである私がいるのだから、未来が変わる可能性だってあります。
でも、ちょっと悩んでしまうのです。
もしこのまま助けたら、あのルナドールとは会えないのかもしれません。未来が変わったら…私の持っている情報は、役に立っていくのか…そう悩んでしまいます。
いや、今は考えるのをやめましょう。
ゲームでは回想シーンでしか出てこなかったイベントの真っ最中だ!
あぁ!推しが!推しが!推しの『神器』が決まる瞬間が見れる!!
叫びたい欲と鼻血が出そうになるのをグッと抑えてその光景を見続けることにしました。
黄金に光り輝く魔法陣の真ん中に神に祈るような体制で座っているミラージュ様。
なんたる神々しさよ。
オタク心がくすぐられるよぉぉ
「…私の名はミラージュ=ナノポーラス。希望を胸に、勇気を掌に、命の灯火をここに、ナノポーラスの民を導き、白く輝く希望となるべく、精霊と神のご加護と力をどうか私に与えて下さい」
するとミラージュ様の頭上が黄金に光り輝き、髪色が美しい黄金から雪にような純白に変わりました。
これが、ミラージュ様が皇族であるという証なのです。
真っ白な魔力を持ち、その影響で魔法を使う際に髪が必ず白くなる。皇族の血筋に現れる物です。
ミラージュ様から溢れ出る光が一つになり、少しずつ形を成していきます。
そして出来上がったのが4枚の鏡でした。
その名前はそのまま『四枚鏡』
それぞれに名前がついていて、一枚目は『真実の鏡』二枚目は『時の鏡』三枚目は『繋がりの鏡』そして四枚目は『封の鏡』
いわば国を導く鏡でしょう。
マニャーナからすれば神秘的な空間だし、七瀬朝からすれば一度は目にしておきたかった瞬間。
これならミラージュじゃなくてマニャーナに転生して本当に良かったよ。
『神器』を授かったミラージュはほっと一息ついて、そのまま次の儀式にうつった。
「白く煌めく魂をより一層輝かせ、美しき光を辿り、我が魂の友であり守護者たるものよ。この声を聞き、正しき道を歩み我が前に現れたまえ」
次は魔法陣が光出した。
『
ミラージュ様も玉のような汗を流しながら懸命に祈ります。
ミラージュ様の心臓あたりからどんどん白い光が溢れ、また形を成していきます。
ピカァ!っと光ったかと思うと魔法陣の光も消え、ミラージュ様の髪色も元に戻っていました。
すると彼女の上斜め前に美しい純白に輝く蝶の羽を持った、私たちとそう変わらない身長の少女が出てきたのです。
真っ白な髪色は足を越して長く、開くと黄金の瞳がミラージュ様を見下ろしていました。
そして艶やかに光る唇が小鳥のような声を出しました
『おはよう。魂ノ主様。私の名はルミナス。主様の守護者としてこの場に召喚された。私は貴方の魂の剣となり盾となりましょう。これからよろしくお願いしますね、主様』
そう言われてミラージュ様は立ち上がり、ルミナスの手を取りました。
「えぇ。よろしくね、ルミナス。私はミラージュ。ミラージュ=ナノポーラスよ。主様なんかじゃなくミラージュって呼んで欲しいわ」
『なら、ミラージュ。我が主様。いつでも私を頼ってくださいね』
そこで会場で歓声が起こる
私はゲームで知っていたからそこまで驚かなかったけど、マニャーナとして教育を受けてきたからより彼女がすごいんだなと、そう思うことができました。
ミラージュが契約したルミナス。
彼女は光の精霊王。
精霊王は国の守護者とも呼ばれ、神と同等の存在です。
そんな彼女がミラージュ様の守護者となったのですから、後継者候補の中でも序列は恐らく上位。第一皇子が炎の精霊王と契約していますから…一位とはなりにくいんですよね。
歓声と拍手が巻き起こる中、ミラージュ様は美しく一礼され、私たちの元へ帰ってこられました。
ほっと一息着く間も無くインビエルノが呼ばれ、どんどん儀式が進んでいきました。
インビエルノは『アタナシアの魔導書』という、その名のと入り魔導書の『神器』を召喚して、光の屈折で羽が虹色に輝いて見える大鷹のエントと『
オロスは『エクリクシィの掌鍔』といういわばナックルの『神器』を召喚して、青い瞳が特徴的なカラカルという猫科の動物のクエイクと『
そしていつの間にか私の番になっていました。
どんな『神器』を召喚して、どんな『
「マニャーナ=ベンタブラック様、魔法陣の中へ」
ついに名前を呼ばれた。
私はこくんと頷いて魔法陣の中に足を運びました。
その前にチラッと、両親の姿が目に映りました。
マニャーナの両親は、どちらも私のことを大切に思ってくれていました。父も母もあまり感情を出さない人ですが、何となくそれは理解できました。暗殺業で目に光が宿りにくくなってしまっていますが、2人が私達兄妹を見つめる眼差しはとても優しかったからです。
まぁ、この後起こることを考えたら少し申し訳ないかなと思いつつも褒めて欲しいなとも思います。
ふーっ、よし
「…私の名はマニャーナ=ベンタブラック。希望を胸に、勇気を掌に、命の灯火をここに、王を守り、ナノポーラスの民を導き、黒き閃光が輝く希望となるべく、精霊と神のご加護と力をどうか私に与えて下さい」
唱えるとやはりみんなと同じように頭上が輝き始めました。
白く輝く光の中、ベンタブラック家の証の一つ、魔力を使うと髪が漆黒へと変化する。勿論私も普段は灰色の髪が一瞬にして漆黒へと変わりました。
魔力が体の中から抜けていくのが分かります。
これでようやく、『神器』の所持が皇族と公爵家にしか許可されていないのかが分かりました。
それは魔力量の差です。
一般人と貴族、そして私たちとでは魔力の所有量に大きな違いがあります。
『神器』召喚には大量の魔力が必要で、一般人と公爵家以外の貴族にはそれに耐えられる量の魔力を持っていません。
もし魔力が一定数以下になると魔力減少によるショックが起こり、魔力が再生されにくくなってしまいます。それを避けるために他の家系の人たちは『神器』を持っていないのです。
これで私も確実に理解できました。
光がどんどん強くなり、どう考えたかって形をなすのではなくデカくなってる気がします。
ざわめき始める会場内。
いや、私だってびっくりしてますよ。でも、この『神器』ならこうなってしょうがないのだと、そう思いました。だって…
光がおさまったかと思うと、人々の目の前には何もありませんでした。
何もなかった、失敗したんじゃないかと疑われ始めましたが、私の一言で全てが変わりました。
「…すっごく綺麗!」
私が『神器』を手に取ってそれを見て声を上げていました。
だって私の目には見えていて、本当に綺麗で美しい物だからです。
すると、ガタン…カラカラカラ…っと音が響きました。
後ろを見てみると1人の老人が私の方を見て唖然とし、持っていた杖を落とすほどの驚きに溢れていました。そして、なんとか老人は…現ベンタブラック家当主が声を出しました。
「まさか…お前に見えているということは…それは『アラクネ』…女神の糸じゃ…!」
『神器・アラクネ』
ベンタブラック家初代当主シュヴァルツ様が糸を操る女神様と契約した時に授かったと言われる『神器』で、その糸は使用者にしか見えない特殊な物で、重い物を持ち上げたりするほどの強度を持ちながら、糸が張り巡らされている場所を通れば一瞬にしてバラッバラになる鋭い糸。『
ベンタブラック家では初代様以外が召喚したことはなく、特に現当主はこれをずっと狙っていました。
これと私の相性と言うのは最強です。
白米にたくあん
羊羹に緑茶
ポテチにコーラ
そんなレベルです。
まぁ、ベンタブラック家が所有している訓練用の暗器の中でも私が扱っていたのは『アラクネ』と似た
なんなら私なんかより現当主と両親の方が驚いてました。
「貴様!わしを差し置いてよくも…!」
「黒く煌めく魂をより一層輝かせ、美しき光を辿り、我が魂の友であり守護者たるものよ。この声を聞き、正しき道を歩み我が前に現れたまえ」
私はあのクソジジイの発言を置いておいてすぐさま『
何を言っても反論してくるジジイなんて置いておきましょう。人の顔色を窺って生きていくのは社会人の時だけで十分です。
そんなことより、心臓があっついんですけど!?何これ?!ミラージュ様よくこんなの耐えてましたね?!さすが主人公…
どうにかこうにか耐えて、ピカッと光が瞬きました。
そうするとふわっと体の緊張と心臓の熱が和らぎました。
パッと目を開け、頭を上げてみると、そこには綺麗な狼がいました。
夜に溶け込むような黒色の体毛。
そこに隠れた漆黒の瞳
首には日本で言う叶結びが施された赤色の首飾り
人よりも遥かに大きい、シャンデリア…いや、前世の…神社にある鳥居くらいの大きさ?くらいの大きさのある狼がそこにはいました。
『おはよう。我が魂の主人様。私の名前はアルバ。狼族の一つ、夜明けを司る
一瞬だけ頭が真っ白になりました。
こんなことになったのは確か10徹目を迎えた頃でしたか。あと同期が一番忙しい時期に退職したって時。
『?主人?』
「へ、あ!よ、よろしくね!私はマニャーナ=ベンタブラック!長いからマニャって呼んで!」
『ふふふ、可愛らしい主人様ですね。ではマニャ様と』
「様はいらないよ。あと敬語もね。これから一緒に暮らすんだもの、家族なのに堅苦しいのは辛いじゃない」
『分かりま…いえ、分かったわ。よろしくね、マニャ』
「うん!よろしくね、アルバ!」
こうして、私は無事、ゲーム通り『アラクネ』を召喚し、アルバと契約することができたのでした
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