第28話 何気ない日常



「ろーくんこれやろー」



「ん?」



「バイオハード4」



 休日。すらぐちゃんに誘われてゲームをする。



「というわけで、今日はカメラマンのろーくんとバイオハード4をやりまーす。あ、スパチャありがとー」



「配信してんのかよ!」



 すらぐちゃんと一緒に配信しながらゲームをやることになった。



「おらーゾンビしねええええ撃て撃て撃て」



「すらぐちゃんダメだって! あなたもゾンビでしょ!」



 なんでこのゲームチョイスしたんだよ。



「なんかAIの機能使ってゲームの最速クリアとかできないの?」



「ゲームでAI機能使って簡単にクリアしてもつまらないじゃん」



 この前メリカやったときはめちゃめちゃ良いアイテム出すようになんか操作してたよなアンタ。



「コメントのみんなもそうだそうだと言ってるよ」



「リスナーはすらぐちゃんの信者だからな」



 とか言ってたのに、バイオ4配信の後にやった格ゲーであきらかにすらぐちゃんのキャラだけ不正操作してやがった。

指摘したら「証拠は?」とか言ってきたけど、コマンドなしで奥義出しまくってたらさすがに分かるわ。



「ということで、ボクが勝ったので今日のご飯はボクの好きなメニューだよ」



「こういう時だけ手段選ばないよね君」



「オムハヤシライス! あとデザートは焼きプリンがいい」



「はいはい」



 オムハヤシライスっていうのは、ハヤシライス用のルーで作ったソースをオムライスにかけたやつっていう、まあそのまんまなんだけど、作るのにひと手間かかるすらぐちゃんの好物だ。



「なんで俺、ゾンビAIとゲームやって、不正されて負けて、メシ作る羽目になってんだろうな」



「ご褒美だね」



 なにがだよ。



 すらぐちゃんと出会う前までは、ゾンビAIが家に居れば色々家事をやってくれて、AI機能で作業のサポートとかしてくれて、QOLが爆上がりなんだろうなあとか思ってた。



 実際は家事は出来ないわ、データは偏ってるわ、約に立たなそうなネタばっかり収集するわで、今まで持ってたゾンビAIへのイメージは消し飛んでしまった。



「すらぐちゃーん、ごはんできたよ」



「はーい」



 でもまあ、イメージが悪くなったかというと、そんなこともなく。



「わぁっ美味しそ~。手羽先のハーブ焼きもある」



「せっかくだからちょっと豪勢にしてみた。ワイン飲む?」



「飲む飲む! ろーくん分かってる~!」



 家に帰ったら、一緒にメシ食ってくれるやつがいる。



 それだけで十分QOL上がってんのかもな。



「ろーくん、かんぱ~い」



「おう、乾杯」



「ルネッサ~ンス」



「男爵家のご令嬢やめろ」



 そういうのばっかり覚えてくるのよウチの子。

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