第22話 ゾンビクッキング



「ろーくんみてこれ」



「ん? ……クラフトエネルギードリンク作ってみた?」



 すらぐちゃんに見せられた動画では、グラサンをかけたおっさんがゾンビAI用のエネルギー剤を手作りしていた。



「エネルギー剤って手作りできるんだ……」



「これだよろーくん!」



「え、なにが」



「ボクもエネルギー剤手作りできれば、また今度切らしちゃっても大丈夫」



 というわけで、すらぐちゃん専用のエネルギー剤を手作りすることになった。



 __ __



「こんすら~。すらぐちゃんの懺悔室だよ。今日はすらぐちゃん特製のエネルギー剤を手作りしていくよ」



 懺悔室はどこいったんだよ。



「この動画を視てるゾンビAIのみんなも是非やってみてね。美味しすぎて首が落ちちゃうこと間違いなし」



 それを言うならほっぺただろ。

いやほっぺたもリアルに落ちそうで怖いけども。



「まず、このエネルギー剤の元になる、Zパウダーを入れます」



 Zパウダーっていうのはゾンビの栄養(?)になる、エネルZを結晶化して粉末にしたものである。

エネルギー剤の主要成分というわけだ。



「あ、このZパウダーはベストプライスのやっすいやつだよ。効果がちょっと減ってるかも。ジェネリック医薬品みたいな感じだね」



「減ってないしジェネリック医薬品は関係ねえわ」



 全国の製薬企業から訴えられるから滅多なことは言うんじゃねえ。



「このZパウダーを水に溶かしていきま~す。ドボドボ~……あ、これ水じゃなくて焼酎だった。まいっか」



 良くねえわ。アンタ見た目未成年なんだから酒とか出すな。



「この中にハチミツと絞ったレモンを入れて~、仕上げに炭酸水で割ったら完成~」



 いやこれほぼレモンチューハイじゃない? さっき割るって言っちゃってたし。



「それじゃあさっそく飲んでみたいと思います。はい、今週もおつかれっした~乾杯~」



 ごくごく……



「……っフゥ~! めっちゃ効くわこれ」



「ただの宅飲み動画じゃねえか」



 効くってなんだよ。



「いや~なんかめっちゃ頭が冴えてきたような、ふわふわするような不思議な感じだね~ふわふわ時間だね」



 ほろ酔いになってんだよそれ。



「この手作りエネルギードリンクと一緒にからあげとかキメるとね、最高だね。あ、普通のゾンビAIは摂取出来ないんだった。ここ編集でカットしなきゃ」



 すらぐちゃんが目で「夕飯はからあげにしてくれ」と訴えてくる。衣にZパウダーでも入れとこうかな。



「あ、レモンの代わりにグレープフルーツやライムジュースを入れたり、ただの炭酸水じゃなくてトニックウォーターで割ってもおいしいよ。みんなも試してみてね~」



 この動画を出した後、酒入りエネルギードリンクがスラム街の野良ゾンビたちの間で流行したらしく、そのせいですらぐちゃんはちょっと炎上した。



「ゾンビだってさ~飲まないとやってられないときがあるんだよ。わかるぅ?」



「うんうん」



「なのにさ~ゾンビAIが酒なんか飲んでんじゃねえとかさ~酔っぱらって人様に迷惑かけるなとかさ~ちょっと心がせまいよねぇ」



「そうだね」



「全部ボクの動画が悪いってのかよ……なんだよみんなしてさぁ……グスン」



「大丈夫、君は悪くない」



「うぇ~んろ~くん~!!」



「はいはい、それはそれとしてすらぐちゃん、お酒はほどほどにしようね」



 つかしばらく禁酒だな。うん。



 みんなもアルコールには気を付けよう!

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