第21話 エネルギー剤
「ただいま~」
「やっと帰ってきた……」
1泊して実家から帰ってきた。
母さんも父さんもすらぐちゃんを快く迎えてくれて安心した。
若干婚約者を連れてったみたいな反応だったのが謎だが。AIだぞ。
そういや昔、イフ先輩をウチに呼んだときもあんな感じだったな。
それから先輩の両親とも連絡を取り合っていて、今でも先輩のウチにケーキを買いに行ったりしてるらしい。
「そんなに俺の独り身生活が心配か? 普通に家事出来てるのに」
「ろーくんに幸せになってほしいんだよ」
「まあ、それは、うん」
物心つく前に実の親に捨てられた自分としては、幸せな結婚生活というのがあまりイメージできない。
ましてや子供なんて作れない。俺を捨てたやつらの遺伝子は自分で打ち止めにしたい。
「あ、しまった!」
「どした?」
「エネルギー剤切らしちゃった。ろーくん買いに行こ~」
ゾンビAIが稼働し、理性を保つために必要なエネルギー剤。
これが不足するとただのゾンビになってしまうらしい。
ただのゾンビってなんだ。
すらぐちゃんは超絶高性能なので、人間と同じ食事をすれば大丈夫らしいんだけど、一応定期的に飲んでいる。もはやサプリじゃん。
「いつもネット通販で買ってるじゃん」
「好きなメーカーのやつが品切れになっちゃってさー」
エネルギー剤はいくつかのメーカーが出していて、ドリンクタイプや錠剤タイプ、ゼリー飲料タイプなどがある。
すらぐちゃんはヤク〇トみたいなやつを飲んでる。
「別のやつでいいじゃん」
「違うの飲んだら色々変わっちゃうかもしれないじゃん」
「なにが?」
「性格とか、性能とか」
さすがにそんなことないだろ。てか俺の作ったメシ食ってるけど、それで性能とか変わってるんだろうか。
「ねー買いにいこーよー。あ、うう……り、理性が……耐えられない……」
「茶番やめろ」
しょうがないので近くのゾンビAI関連の商品が売っているショップへ。
ゾンビAI用以外にも、サイボーグ化した人用の食品なども売っている。
「脳機能をサイボーグ化した人は味覚とか変わっちゃうらしいよ」
「それでサイボーグ用に調整した料理があるのか」
東〇グールみたいだな。
「あ、あったあった」
すらぐちゃんが愛飲しているエネルギー剤を見つけてレジに持っていく。
「ろーくーん、たすけてー」
「どうした?」
「ゾンビAIのユーザーじゃないとエネルギー剤買えないって」
「すいません、そういう決まりでして」
「そうなんですね」
すらぐちゃんの代わりにエネルギー剤を購入する。
「最近、ゾンビスラムに住んでる野良のゾンビAIがエネルギー剤を買って闇市に流してるらしくて……」
「そんなことが……」
野良ゾンビAIにはエネルギー剤を補充してくれる所有者が居ないから、自分たちで手に入れないと理性を失ってただのゾンビになってしまう。
こういったところにも、ゾンビAIを不法廃棄するやつらの弊害が出ているということだ。
「嘆かわしいね」
すらぐちゃんもこれには珍しく憤っているみたいだ。
「ろーくんがバイトの間にお酒買えなくなっちゃうかも。それは嫌だね」
ただのアル中だった。
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