第20話 じっかぐらし!



「ロウにぃちゃ~ん! お風呂入ろ~!」



「いや入らねえよ」



 俺が1人暮らし始めるまではときどき一緒に入ってたけど、もうヨウちゃんも中学生だし。さすがに無理だろ。



「じゃあろーくんボクと入ろう」



「入らないから。てかすらぐちゃんとヨウちゃんで入ってきなよ」



「ちぇっ。よーちゃん一緒にお風呂入ろ~」



「すーちゃんとお風呂! やったー!」



 前にヨウちゃんが泊まりに来てからすっかり仲良くなったようだ。良かった良かった。



「え、すらぐちゃんってお風呂入って大丈夫なの?」



「なんか防水加工らしいよ」



「へー。やっぱご主人様とお風呂に入れる用にカスタムされてるのかしら」



 嫌な言い方だなおい。



「そういや母さん、父さんは?」



「ビ〇リー飲んで酔っ払って爆睡してるわ」



「ビア〇ーで!?」



 アルコール度数0.5%だぞ。

甘酒とかでもガチ酔いしそうだなあの人。



「それにしても、母さんたちはゾンビAIにまったく抵抗ないんだな」



 若い世代の人たちはゾンビAIを広く受け入れているが、ある程度上の世代になると、ゾンビ化もAI技術もよくわからない、なんか怖いみたいな感じで拒絶する人は結構いる。



「私たちがそんな保守的な感じだったら、ロウやヨウを引き取ったりもしないでしょ」



「確かにな」



 施設の子を養子として迎え入れるのは、よほどチャレンジ精神がないとなかなかできないことだと思う。



「そういやすらぐちゃん来てから引っ越しとかしてないわよね。今のワンルームのアパートで狭くないの?」



「いやあ、まあ、ちょっと狭いかな」



 一緒のベッドで寝てるとか言えねえ……。



「1LDKくらいの部屋に住みたいけど、予算がなあ」



「すらぐちゃんが配信で稼いでるんじゃないの?」



「あの稼ぎはほぼ食費に消えてる」



「あらま」



 やはり正社員目指して就活したほうがいいんだろうか。

今の夜間警備のバイト、結構気に入ってるんだけどな。



「ふ~サッパリした~」



「お母さ~んアイス食べていい~?」



「いいわよ~」



「やった~! すーちゃん何にする? ヨウはあずきバー」



「ボクはアイスの実~。あ、そういえばあずきバーってサファイアより硬いんだよ」



「じゃあヨウはサファイア食べてるってこと?」



「そうだよ」



 んなわけねえだろ。



「そういえばろーくん、さっき引っ越しがどうとか言ってたけど」



「ん? ああ、二人だと今の部屋は狭いかなーって」



「ボクは全然大丈夫だよ」



「いやでもすらぐちゃんも部屋とかあった方がいいだろ」



「え~そしたらろーくんと一緒に寝れなくなっちゃうじゃん」



「いやそれは」



「えっロウ、あんたすらぐちゃんと一緒に寝てるの!?」



「ロウにぃちゃ~ん、あずきバー硬くて食べられない」



「しょうがねえだろベッド1つしかないんだから! あとあずきバーは牛乳にでも浸して食え!」



 お母さんにゾンビAIと一緒に寝ていることが知られてしまった……(泣)。



「じゃあ今の部屋で良いわねぇ」



「良いよ」



「良いよじゃねえんだわ」



「ロウにぃちゃん!」



「どうした?」



「あずきバー牛乳に入れて食べるとめっちゃ美味しい!」



「そ、そうか。よかったな」



「うん!」



 なんだかドッと疲れた。

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