第19話 帰省

「こんすら~。すらぐちゃんの懺悔室だよ」



 今日も今日とてすらぐちゃんが配信している。

いつの間にかチャンネル登録者が10万人を突破していた。



「たまに入るツッコミの声はボクのご主人様兼カメラマンのろーくんだよ」



「ご主人様とか言わんでいい! またお気持ちメッセ来ちゃうから!」



 前の配信中、すらぐちゃんが街頭インタビューで一緒にいた人について聞かれて、馬鹿正直に俺を画面の前に引きずり出して紹介した結果、一部界隈からプチ炎上した。

まあその、主に彼女いない歴=年齢の男性リスナーから。



「ボク別にアイドル売りしてないし~。ろーくんだってテレビ一緒に映ってたんだから普通の人は最初から知ってるよ」



 知ってても理解したくない人がいるんだよ……



「えーと、なになに、ろーくんさんこんにちわ、ろーくんもっと出して、ろーくん彼女いますか? って、ダメダメ! ろーくんはボクの所有者なんだから」



「なんの話してんの?」



「なんでもないからカメラマンさんはちょっと静かにしてて」



「はい」



 なんなんだよ。



「えーと、ペンネーム、マザーハッカーさん。すらぐちゃん、息子がお世話になってます。いい加減そろそろ帰省しなさいって言っといてください。だってさ、ろーくん」



「母さんなにしてんだよ!」



 なんで配信見てんだよ。妹のヨウにでもチクられたんか? あとそのペンネームやめろ。



「コメントのみんなも実家帰れ親不孝者って言ってるよ」



 すらぐちゃんのリスナー辛辣すぎるだろ。



「あ、帰省するときボクも連れてきてだって。ろーくん! お義母様に一言お願いします」



「お義母様って言うな! あー、母さん? 今度帰りますんで、その辺でご勘弁を……」



「というわけで、今度ろーくんの実家に行ってきま~す。いえ~いガチ恋オタクくんみてる~?」



 やめとけやめとけ。



「ん? なになに、ろーくんガチ恋勢です。お義母さん、ろーくんを私にください……はいダメ~この人ブロックです」



「私情入っちゃってるって」



 __ __



「ただいまー」



「おじゃましまーす」



 というわけで、実家に帰ってきました。



「ロウにぃちゃんお帰り! すらぐちゃんも!」



「よーちゃんおひさ~」



「ヨウちゃん、母さんは?」



「お父さんと一緒にリビングにいるよ!」



 あ~そうか、この時間は……



「母さん、父さん? すらぐちゃん連れてきたぞ」



「よーし3番いけいけいけ! 逃げ切れるわ!!」



「何やってんだ12! 差せ差せ!」



「よっしゃあ単勝もらったわぁ!!」



「あーもうなにやってんだ仕掛けが遅せえんだよ! あ、ロウじゃん。お帰り」



「どーも出迎え来ないなーと思ったらやっぱ競馬じゃねえか」



 二人して趣味が競馬の両親は、休日の昼過ぎにやってる競馬番組を見るのが昔からの習慣だ。



「ちなみに結果は?」



「ママが2万勝ち。俺は1万負け……」



「プラス1万なので今夜は焼肉よ」



「「やったあ!!」」



 焼肉食ったらプラマイゼロじゃねえか。



「ほら母さん父さん、すらぐちゃん連れてきたぞ」



「ども。ろーくんにお世話になってます。すらぐちゃんです」



「すらぐちゃん! ほらパパ本物よ本物!」



「すらぐちゃんの懺悔室だ! こんすら~!」



 いやただのファンかよ。



「一人暮らしのロウが心配だったけど、これでもう安心だわ!」



「ママさん、ろーくんのことはボクにおまかせだよ」



「え、なにが? すらぐちゃんに安心要素あるか?」



「だってゾンビAIよ! 最先端じゃない!」



「競馬予想がはかどるよなあ。いいなあロウ、今度パパと競馬やろうぜ!」



「やらねえよ!」



 競馬のAI予想にすらぐちゃんを使うんじゃねえ。



「ちなみにすーちゃんはギャンブル予想できるの?」



「5000万賭ければ7500万くらいにはできるかも」



 そんな元手資金はないので、みんなで焼肉食って今日の儲けは使い切った。



「焼肉美味しかった」



「二人とも、競馬はほどほどにな」



「「はーい」」

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