第18話 すらぐちゃんの懺悔室



「ろーくんこれみて」



「ん~?」



 すらぐちゃんにスマホ画面を見せられる。

いやそれ俺のスマホじゃん。え? ロック解除したの?



「えーと、なになに、[すらぐちゃんとかいうゾンビAIが可愛すぎる件www]……なにこれ」



 古の時代から存在する某掲示板にすらぐちゃんのスレが立っていた。



「この前のインタビューのやつか」



 前に街頭インタビュー受けたときの画像が出回ってるっぽいな。

テレビの影響ってすごいんだな……。




「えーと、なになに……すらぐちゃん可愛すぎ、アイドルデビュー不可避」



 ゾンビアイドル。地下アイドル界隈の一部で流行ってるらしい。



「すらぐちゃんアイドルデビューしちゃう?」



「えーめんどくさ。オタク君と握手とかしたくないし」



「それを言っちゃあおしまいだよ」



 ノンデリすぎてすらぐちゃんには無理かあ。



「後は、なになに……ワイがご主人様になりたい、隣の男いらん、隣の男消してえええリライトしてええええ」



 嫉妬民こっわ。



「すらぐちゃんと街歩くの怖くなってきたわ」



「後ろからグサッってされちゃうかもね」



 それにしてもすらぐちゃん、めちゃめちゃ可愛いって言われてるじゃん。



「すらぐちゃん、動画配信でもやれば人気出るかもな」



「動画配信か~」



「人気出れば投げ銭とかでお小遣い稼ぎできるんじゃね?」



「マジか! じゃあやろっと」



 いやノリ軽いな。



 __ __



「こんすら~。すらぐちゃんの懺悔室だよ」



 こんすらってなんだよ。

すらぐちゃんがマジで配信始めたので画面外から無言で見守る。



「ボクに愚痴や懺悔や相談したいことがあったらコメントしてね」



 AIに愚痴聞いてもらうのか。人としてどうなんだそれ。



「えーと、ペンネーム:お薬常飲議員さん、メンタルが不安定でリスカしてしまいます。どうしたらやめれますか? なるほどね~」



 1発目から重すぎだろ。



「ボクみたいになればリスカとか気にしなくてよくなるよ。はい次」



 なんも解決になってねえ……。



「なになに~、ペンネーム:今すぐムショ入り5秒前さん、ちょっとだけハイになるお薬の配達で空港に行ったら警察に追われています。助けてください。なるほどね~」



 いやコメント打ってる場合じゃねえ。自首しろ。



「自分で全部飲んじゃえば? はい次~」



 回答が終わっとる。



 そんな感じで、すらぐちゃんは小一時間ほど配信してみんなのコメントに答えていた。だいぶ適当だったけど。



「お金いっぱいもらった。あと登録者1万人いった」



「マジかよ」



 うわマジだ。相談した人、みんな高額投げ銭した上で感謝コメしてるじゃん。



「なんであの虚無の極みみたいな回答でみんな満足してんだ……?」



 すらぐちゃんの懺悔室は一部のアンダーグラウンド住民に人気になり、気づいたら配信で貰ったお金で、食費と光熱費がまかなえるくらい稼げるようになった。



「世の中、どこに需要ができるかわからんもんだな」



「ろーくんがバイトクビになったらボクが養ってあげるよ」



「はいはい、ありがとね」



 ゾンビAIのヒモになるのは情けなさ過ぎるので、俺ももうちょっと色々頑張ろうと思った。

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