第17話 野草ハンターすらぐちゃん



「ねえろーくん」



「ん~?」



「一人暮らしのわりに食費高くない?」



「アンタが食ってるからだよ」



 すらぐちゃんに月末の帳簿計算をお願いした。

入力しなくても、レシート眺めるだけで記録してくれるのでかなり早い。



「今月服買いすぎだよろーくん」



「君が今着てるやつだよ」



 ……薄々気づいてはいたが、すらぐちゃんが来てからめちゃめちゃ出費がかさんでいる。

俺一人なら今までのバイト暮らしでどうにかなるが、すらぐちゃんを養っていくことを考えるとかなり厳しい。



「はあ、バイト増やすか……」



「ろーくんバイト増やすの? ボクといる時間が減っちゃうじゃん。やめとけやめとけ」



「すらぐちゃんがヒマなだけでしょ」



 何から目線なんだよそれは。



「そうは言っても金がなあ……」



「まったくもう。どこにそんなお金使ってるの?」



「だからアンタの食費だよ」



 先月に比べて食費が2.5倍になってんだよ。1.5人分食ってんだよ。



「よし! じゃあ食費が安く済むように、ボクが食料調達してあげるよ!」



「食料調達~?」



「それじゃあお外にれっつごー」



「ちょっと待っ」



 __ __



「はい、というわけで到着しました」



「ここは……森林公園ですが」



 前に二人で来た森林公園に連れてこられた。



「それじゃあ探そっか」



「何を?」



「食べられる野草」



「……」



 野食ハンターすらぐちゃん、爆誕である。



「あ、これ食べられるやつ。はい」



「あ、うん」



 俺が持ってる袋にすらぐちゃんがその辺の雑草をむしって入れていく。

え、これ本当に食えるやつ?



「あ、これも食べられるやつ。はい」



「うん……いやこれタンポポじゃん!」



「お刺身に入ってるじゃん」



「あれはタンポポじゃねえよ! 食用の菊だよ!」



「まあ似たようなもんだよ。 タンポポコーヒーとかあるし」



 調べたら葉っぱの部分とか一応食えるらしい。ホンマか?



「あ、これ美味しそう。はい」



「見た目で判断すんなよ! ちゃんと食えるかどうか調べてくれ!」



「ボクは何食べてもおなか壊さないもん」



 急にゾンビ要素出すのズルいだろ。



「じゃあすらぐちゃんの料理は今日から雑草でかさ増しね」



「やだ! あ、この赤いキノコも美味しそう」



「それは捨てろ」



 __ __



「はい、じゃあ食材も調達できたのでお家に帰ってきました」



「草ばっかだけどな」



 帰りにばったり会った大家さんに「草むしりありがとうねえ」って感謝されてしまった。

ちがうんですちがうんです。



「それではろーくん先生、料理の方をお願いします」



「俺が作るんかい」



「ボクが作っていいの?」



「ダメです」



 えーどうしようかなこの大量の草……。



「まず草を下茹でします」



 うわゆで汁がめっちゃ緑色になってきた。



「おままごとみたい」



「お前が始めた物語だろ」



 俺は真面目にメシ作ってんだよ。



「茹でた草に天ぷら粉を溶いた液を付けます」



「油へポ~ンッ!」



「まとめて揚げんな!」



 黄金伝説になっちゃうだろ!



 ~数分後~



「はい、出来ました」



「これなに?」



「えー……野草のかき揚げ?」



 田舎の蕎麦屋とかで出てくる天ぷらみたいになった。いやあれはちゃんとした山菜とか使ってるけど。



「いただきまーす」



 サクッ



「うま!」



「……マジ?」



「まじまじ! ビールのもビール!」



 すらぐちゃんが冷蔵庫からビールを出してきてかき揚げと一緒にキメている。

なんか美味そうに見えてきたな……。俺もちょっと食ってみるか。



 サクッ



「……」



 カシュッ(ビールを開ける音」



 ゴク……ゴク……



「……うっま」



 野草のかき揚げ、めっちゃ美味いじゃん。



「ろ~くん、これで食材ほぼタダでいけるじゃん~食費節約なんて余裕だね」



「毎日これはキツイけど、たまにはな」



「今度は魚とか獲ろうぜ~」



「あ~それもいいかも」



 地球、タダで食えるもの意外とあるんだな……。



「あ、ろーくんビールおかわり!」



「はいよ」



 数日後、酒の消費量が半端ないことに気付いて頭を抱えた。



「ろーくん、お酒も手作りしてよ」



「捕まるわアホ」

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