第16話 イフ先輩




すらぐちゃんと一緒にやってきたケーキ屋、空宮ケーキ店。

そこの店員であり一人娘の空宮イフ。俺が行ってた高校の1つ上の先輩だ。



「はじめまして。ゾンビAIのすらぐちゃんだよ。先輩ちっちゃいね。身長何センチ?」



「初手から失礼だなコイツ……。ウチは空宮イフだ。身長は……140cmだ」



「いや先輩138cmでしょ」



「なんでバラすんだよ! ぶっとばすぞ!」



「すいませんつい」



「ろーくんは悪くないよ。正確な情報収集は大切なんだよ」



 すらぐちゃん結構ネットリテラシーの低いデマ情報収集してるけどね。



「はい、すらぐちゃんモンブランどうぞ~。ロウちゃんはいつものミルクレープね」



「すいませんわざわざ。ありがとうございます」



「いただきまーす。あ、モンブランおいし」



 久しぶりにここのケーキ食べたけど、やっぱりめちゃくちゃ美味いな。



「ろーくんミルクレープ好きなの?」



「コンビニとかのはそうでもないんだけど、ここのは最高」



「パパのケーキは世界一だからな!」



「イフちゃそパパって呼んでるんだ。かわいいね」



「イフちゃそって言うな! いつもはお、親父って呼んでるよ」



 呼んでねえだろ。



「イフ、仕事はもう上がっていいからロウちゃん達と遊んできなさい」



「ちょっとママ、そんな小学生みたいな……」



「ママ」



「こらやめなさい」



 後で八つ当たりされるの俺なんだぞ。



 __ __


「よし、お前ら! ゲーセン行くぞ!」



「あーいいっすね。久しぶりにいきますか」



「ボクここでケーキ食べてるよ」



「すら公も一緒に行くんだよ!」



 すら公て。



「むう。ボクはすらぐちゃんだぞ」



「だからなんだよ」



 俺はA〇Aだぞみたいなのやめろ。



「そういや先輩、免許取ったんすね」



「ん? ああ。おかげでかなり生きやすくなった」



「原付乗れるくらいで大げさじゃない?」



「いや全然大げさじゃないんだよ。先輩すぐ年齢確認されるから」



 俺が二十歳になってから居酒屋に行ったとき、入店して年齢確認、席通されて注文するときにまた確認、先輩がトイレ行ったらまた確認、会計の時も確認された。



 それ以降、俺が酒買ってきて宅飲みすることにした。



「ゲーセンも夜までいると追い出されんだよなあ」



「イフちゃそみたいな子が1人でゲーセンは危ないよ。チャラ男に持ってかれちゃうよ」



「持ってかれねえよ!」



 そんな感じで近所のゲーセンに到着。



「ここ久々に来ましたわ。懐かしいっすね」



「ウチも最近来てなかったな」



 そういや学生時代はよく先輩とゲーセンで遊んで、帰りにコンビニでアイス食ってたな。



「二人はここでなにして遊んでたの?」



「「オシャレ女児パラダイス」」



「……え、なんて?」



「いや、だからオシャレ女児パラダイス」



「オシャパラだよ。すら公知らねえの?」



「ちょっとボクのデータベースには無いけど……」



「じゃあ調べて学習しとけ。神ゲーだから」



「あとアニメの方も履修したほうがいい。神アニメだから」



「えーと、オシャレ女児パラダイス、通称オシャパラは、ファッションデザイナーを目指すキッズ達のお洒落コーデバトルゲーム……」



「ロウ、今コーデカード持ってるか?」



「財布にコーデセットをいくつか忍ばせてます」



「よっしゃ、久しぶりにやろうぜ! コーデバトル!」



「いいっすね!」



「……そっちは年齢確認しなくて逆に大丈夫?」



 久々にお洒落キッズになっちまったぜ。



 その後も三人でゲーセンを楽しんだ。

すらぐちゃんがレースゲーをハッキングしていいアイテムしか出ないようにして無双してた。いやアカンだろ。



 それからコンビニに寄って、先輩がアイスを奢ってくれた。あざっす。



「いや~久々に良い息抜きになったぜ」



「俺も楽しかったです」



「そういえば、ろーくんはなんで昨日連絡が来たときビビってたの? イフちゃそいい子じゃん」



「いい子とか言うな。ウチは頼れる先輩だぞ。で、なにロウ、ウチにビビってんの?」



「いや~、それは」



「なんだよ、ハッキリ言えよ」



「先輩って機嫌悪くなると無言になるじゃないですか」



「え、ああ、まあな」



「で、俺が宥めるハメになるじゃないですか」



「なんだよ。先輩の機嫌取りくらいたまにはいいじゃねえか」



「通報されるんですよ。俺が。なんかデカい男が嫌がる女児を無理やり連れまわしてるって」



「あー……」



「ろーくんとイフちゃそ二人きりだとそう見えなくもないね」



「えん罪でも警察のお世話になりたくないじゃないすか」



「ま、まあもう免許証もあるし、大丈夫だろ」



 ホントかなあ? (ゴロリ)



「そういやイフちゃそは、どうしてボクとろーくんを誘ったの?」



「二人がテレビに出てるのを見たんだよ。それで、最近ロウに会えてなかったし、久々に一緒に遊びたいなって。あとウチの知らない女と相合傘……あっいやそれはちがっ」



「イフちゃそ可愛いかよ」



「う、うるせえな!」



「二人でなんの話してんの?」



「なんでもねえよ!」



「また遊ぼうねって話だよ」



「ん? ああ」



 すらぐちゃんもいるし、今度からちょくちょく遊びに来ようと思った。

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