第15話 呼び出し




 ~~♪



「はい、羽香森です。おう、久しぶり」



 ……。



 …………。



「あい、じゃあまたなー」



 ピッ



「ふう……」



「めっちゃ電話くるね」



「テレビに出ちゃったからな……」



 すらぐちゃんと相合傘してるところをインタビューされて朝番組に映って以降、地元の知り合いからすげえ連絡が来る。



「ボクのこと可愛いって言ってた?」



「ん? あー言ってた言ってた」



「それ絶対言ってないやつじゃん」



 いやマジで言われまくってた。「お義父さん、すらぐちゃんをください」とか言ってる奴もいた。

誰がお義父さんだよ。やらねえよ。



 ~~♪



「またか……はい、羽香森」



「おうロウ、久しぶりだな」



「……」



「ロウ?」



「……おかけになった番号は」



「そういうのいいんだよ!」



「あ~サーセン先輩! 電波がちょっと……」



 ピッ



 しまった、思わず切っちまった。



「ろーくん、だれ?」



「あーその、高校んときの先輩なんだけど」



 ~~♪



「……」



 ~~~~♪



「出ないの?」



「う……」



 ~~~~♪



「ただいまの時間、お電話に出ることが出来ません。ピーッという音の後にメッセージを……」



「おうロウ。なんで電話切りやがった。まあいいや。お前、なんか面白いやつとつるんでるじゃねえか。明日そのゾンビ野郎連れてウチ来いや。じゃあな」



 ピッ



「……」



「なんか可愛い女の子の声だったね」



「ああ……まあ声はね」



 口調はジャイアンだったけどね。



 __ __



 翌日。



「それで、これから昨日の先輩って人のとこに行くの?」



「まあな」



「ろーくんめっちゃビビってるじゃん」



「あの人には逆らえねえんだよ……」



「もし歯向かったら?」



「速攻で刑務所行きかもしれん」



「やば。裏家業の人かなんかなの?」



「そういう訳じゃないんだけどな……」



 ウチから電車を2本乗り継いで、少し歩く。



「もうすぐ先輩ん家に着くぞ。すらぐちゃん気合い入れろ」



「家行くだけで気合いが必要なんだ。ろーくんの実家もこの辺?」



「ああ。最寄り駅が違うから少し離れてるけどな」



 そのうち実家にも帰らねえと、またヨルが襲撃してくるかもしれん。



「あっろーくん、可愛いケーキ屋さんがあるよ」



 すらぐちゃんが指を差す先には、童話に出てきそうな外観の、可愛らしいケーキ屋がある。



「ああ、あそこが先輩の家」



「そうなんだ。てっきり○○組みたいな看板があるでっかい家かと思ってた」



 裏家業から離れろ。



 カランコロン



「いらっしゃいませ~ってあら、ロウちゃんじゃない!」



「お久しぶりです、おばさん」



「テレビ見たわよ~。その子がすらぐちゃんね?」



「ども。すらぐちゃんだよ」



「いきなりタメ口かますな」



「いいのよそんなの~。あっ娘なら今配達行ってるから、ちょっと待っててね。あ、ケーキ食べるわよね? なにがいい?」



「いやそんなお構いなく……」



「ボクはモンブラン」



「おいこら自分から構われにいくんじゃねえ」



「うふふっ、AIなのに人間味があっていい子じゃない」



 カランコロンッ



「配達行って来たぞ~って、あっ! ロウ!」



「お、お久しぶりです、イフ先輩」



「先輩? この子が? 幼女やん」



「おいそこのゾンビ野郎! 幼女って言うんじゃねえ! ウチはロウの先輩だぞ!」



「すいません先輩ウチの子が。ほらすらぐちゃんもあやまって」



「さーせん」



 まあ、すらぐちゃんがそういう反応になるのも分かる。



 俺とすらぐちゃんの前には、どこからどう見ても小学生にしか見えない女の子が、原付のヘルメットを抱えて仁王立ちしていた。

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