第14話 まちかどインタビュー



「うわ、しまったな……」



 バイトが終わってモール内から外に出たら、雨が降っていた。



「昨夜に家出たときは大丈夫だったのに」



 すらぐちゃんに天気予報教えてもらっとくんだった。



「しゃーない、走って帰るか……ん?」



「へいそこの兄ちゃん」



「って、すらぐちゃんか」



 家の方から傘差したすらぐちゃんが歩いてきた。



「傘持ってってないから困ってると思って」



「よくわかったね」



「スマホくんが言ってた」



「は? 俺のスマホ?」



「うん」



「なんで?」



「前にちょっといじって意思を持たせたから」



 いや持たせんなよ。



「ウソウソ。家に傘あったから」



 なんだ。真顔で言うからマジなんかと思った。



「GPSはボクとリンクさせてるけどね」



「ははっ、またまたご冗談を」



「これはほんと。ろーくん昨日のバイト帰りに牛丼屋行ったでしょ」



「……」



 いつも間にかゾンビAIに位置情報を管理されていたらしい。



「なに食べたの?」



「……チーズ牛丼、半熟卵付き」



「チーズ牛丼食べる男はモテないよ」



「そんなことねえよ」



 学習データ偏りすぎだろ。



「でもろーくんにはボクがいるからね。チーズ牛丼食べても大丈夫だよ」



 それどういう意味?



「まあいいや。来てくれてサンキュね」



 すらぐちゃんが持って、っていうか差してきた傘に一緒に入って、雨の早朝の街を歩く。



「折りたたみ傘ないの?」



「持ってたんだけど、台風の日に先が吹っ飛んでぶっ壊れた」



「草」



「草って言うな」



「そんなことより牛丼食べたい」



「お、じゃあすこ屋寄ってくか」



 そんな感じで街を歩いていると、



「すいませ~ん! そこの相合傘のかた~!」



「ん?」



 なんかマイク持った女性がこっちに走ってくる。あ、すらぐちゃんが俺の陰に隠れた。



「おはようございます! ジャンクTVのアサカツ!コーナーです! ちょっとお話いいですか?」



「はあ、大丈夫ですけど」



 話しかけてきたアナウンサーっぽい女性が、少し離れたところにいるカメラマンを呼びにいく。



「えっちなインタビューかな」



「んなわけねえだろ。朝のニュース番組だよ」



 実家にいたとき、よく母さんが視てた気がする。



「お待たせしました~! それでは、早朝に相合傘で街を歩くカップルのお二人にお話聞いてみたいと思います!」



「いやカップルじゃないですけど」



「ご主人様と下僕です」



「おいこら嘘つくな。この子ウチのゾンビAIなんですよ。傘忘れたから持ってきてくれて」



「すらぐちゃんです」



「なるほどゾンビAIとご主人さんですね~! 彼女さんそういえば肌青いですね!」



 いやすぐ気づけよ。あとご主人って言われるのなんか恥ずかしいな。



「それにしても随分可愛らしいゾンビAIですね! でもお高いんでしょう?」



「一人テレビショッピングやめてもらっていいすか」



 まあすらぐちゃんのビジュアルだと、普通に買ったらめちゃくちゃ高いだろうな。



「今日はあいにくの雨模様ですが、お二人は楽しそうですね!」



「ご主人様といるときの雨って、特別な気分に浸れてボクは好きです」



「ちょ、すらぐちゃんハズいって、なに急に」



 思わず顔を手で覆う188cm22才男性。



「あ”っ! ごちそうさまでしたァ! インタビューあざした! 末永くお幸せに~!」



「ばいばーい」



 え、なんかインタビューのお姉さんとカメラマンさんがいつの間にか立ち去ってる。



「てかすらぐちゃんなに今のイケメンセリフ」



「昔ネットで流行ったやつ」



「あ、そう……」



 そういうの学習しがちだよね。



 ~~♪



「ん? はい、羽香森です」



「ロウにぃちゃん! 今テレビ出てた! すらぐちゃんと!」



「あー……生放送かあれ」



「遂にすらぐちゃんと結婚したの!?」



「してねえよ」



「お母さんがすらぐちゃん今度紹介してって言ってる!」



「……」



「もしもし? ロウにぃちゃん~!?」



 ピッ



「ふう……」



「ろーくん、おつかれ」



「アンタのせいや」



 このあとめちゃくちゃチーズ牛丼食った。

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