第13話 市民団体
「それでは続いてのニュースです。昨日、国会の前で行われた、人権保護団体”死者蘇生を許さない会”によるデモの様子を……」
「まーたデモやってるよ」
ゾンビAIが開発されてから、連日のように市民団体が反対運動をしている。
倫理的な理由だったり、労働者の就業確保の為だったりで、まあ色々な団体がいる。
「あのデモの人、前は環境保護団体のリーダーやってたっぽいね」
「AIロボット作るのを反対してたところか」
環境保護団体で、資源の無駄遣いだーとか反対されたからゾンビAIが開発されたのに、今度はそれを反対するのか……。
「てか、そういう前の所属先とかって検索でバレちゃうんだ」
さすが腐ってもAI。
「すらぐちゃんは高性能だから、ディープなウェブも探れちゃうんだよ」
「情報屋かよ」
頼むから違法なことはしないでくれよ……。
「そういやゾンビAIって、日本以外にはあまり浸透してないんだよな。なんでだろ」
「検索中……ヒットしました」
「その小芝居いらんから」
「海外でゾンビAIが使われないのは、だいたい宗教のせい」
「宗教?」
「多くの宗教では、人間は死んだら天国とか極楽浄土みたいな別の階層の世界に行ったり、輪廻転生したりする」
あー、たしかにそんなイメージあるな。
日本はハロウィンで仮装パーティして、クリスマスでプレゼレント貰って、大晦日に除夜の鐘聞いて、初詣で神社行くからな。
ゾンビでもなんでも来いって感じなんだろう。
「宗教が浸透してる海外だと、ゾンビにしてこの世に死者を留めておくのは信念に反するんだよ」
「なるほどな」
「ちなみに日本で反対デモやってる団体は、ほとんど活動費に海外資本が入ってる」
「うわまじか。まあでもさっきの宗教の話聞くと納得だわ」
「いかがでしたか?」
「まとめサイトやめろ」
ゾンビAIの労働力のおかげで、ずっと下降傾向にあった日本の経済力が回復してきたことも、海外から批判される原因らしい。
そのへんすらぐちゃんが説明してたけど、俺には難しすぎて途中で寝た。
__ __
「そういえば、反対運動してる市民団体はよくニュースで見るけど、ゾンビAIを推奨してる団体はあんまし見ないな」
人工知能学会とか大学の研究所くらいか。
まあ反対運動のさらに反対運動とかやらない限り、あまり人目に付かないしな。
「すらぐちゃんが調べてやろうか」
「なんで偉そうなんだよ」
「ろーくんとの会話で色々学習したんだよね」
俺との会話学習で、態度デカい方が良いってなったの? なんで?
「ちょっと甘やかしすぎたのかもしれん……まあいいや。とりあえず調べてみてよ」
「高性能AIすらぐちゃんにお任せあれ。えーと、ふむふむ、なるほどね」
「あった? AIゾンビ推進団体」
「うん。えーっとね」
「はいはい」
「ゾンビAIしか勝たん教会」
「ふむふむ」
「ゾンビアイドル♡クラスタ」
「はあ」
「美少女ゾンビAI検索エンジン研究所」
「うん……」
「ゾンビ化で不老不死になろう! 防腐人間向上委員会」
「……」
ダメだ推奨派終わってるわ。HENTAIしかいねえ。
「あれ~? ボクの名前が美少女ゾンビまとめに載ってないんだけど!」
「いや載らないくていいから」
「え~それってろーくんがボクを独り占めしたいってこと?」
「そうだよ」
「えっ……そっか、ふうん……えへへ」
「いや冗談だよ! すごい照れるじゃん!」
反対派はもとより、推進派だとしても市民団体にはなるべく関わらないようにしよう。
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