第9話 筋トレ
「28……29……30、っと」
「ろーくんなにしてんの?」
「腹筋」
運動不足解消のために、気が向いたときに軽い筋トレをする。
「ジムとか行かないんだ」
「金かかるからなあ。そこまで本格的に鍛えたいわけじゃないし」
ボディビルの人くらいバキバキになりたいとは思ってないけど、まあそれなりにはね。
「じゃあボクの学習データでバキバキ自宅トレーニーにしてあげるよ」
「ええ……」
不安しかねえ。
「じゃあまずはボクを肩車ね」
「え、うん」
「そしたらそのままスクワット10回」
「おう……1、2、3……」
「わあっあはは!」
「うわっこら上ではしゃぐな!」
肩車楽しんでんじゃねえよ。
「ハア、ハア……8……9……」
「ラストーがんばー」
「……10!」
いや、しんど……
「おつかれー」
すらぐちゃんが頭を撫でてくる。
「ハア、ハア……いいから、もう降りてくれ……」
ヒザがガクガクする……
「じゃあ次、腕立て伏せね」
「……おう」
腕立ての格好になったらすらぐちゃんが背中に乗ってきた。
「ぐえ」
「じゃあ10回ね。はい、いーち、にーい」
「ぐう……3、4……」
「はーち、きゅーう」
「……10っ!」
終わってそのまま床にうつぶせになる。
「おつかれ~」
「しんどい……」
「じゃあちょっとそこで休んでて」
すらぐちゃんがキッチンの方へと消える。
ガチャガチャ……ギュイイイイイン……
「何やってんだろ……」
不安しかないんだが。
「おまたせー」
なんか緑色の飲み物を持ってきた。
「なにそれ」
「すらぐちゃん特製プロテイン~!」
「絶対飲まないから」
ゾンビになっちゃうやつだろそれ。
「はい、グイッとグイッと」
「嫌だ!」
まずい、筋トレのダメージで腕が上がらない……
「やめっゴボボボ!」
「そーれイッキ、イッキ」
「ゴクゴク……ハア、ハア……」
「美味しかった?」
「こんなん美味いわけっ……美味いな」
なんか不思議な味するわ。なんだこれ
「これなに入ってんの?」
「それは乙女の秘密」
「……その左手に持ってるのなに?」
「これはゾンビAIのエネルギー剤だよ」
「…………」
聞かなかったことにしよう。
__ __
「……なんか疲れが取れた気がする」
「流石すらぐちゃん特製プロテイン」
「自分で言うなや」
大丈夫? 肌とか青くなってきたりしてない?
「てかすらぐちゃんも筋トレやりなよ」
「バキバキ腹筋ゾンビになっちゃおうかな」
腹筋割れてるすらぐちゃん、ちょっと見てみたいわ。
「じゃあ腹筋するから足おさえてて」
「ほんとにやるんかい」
「じゃいくねー。いーち、に」
ずぼっバタッ
「いった~頭打った……あ、足抜けた」
「うわああああ!?」
すらぐちゃんが体を持ち上げたところで、上半身が抜けて俺の手の中に太ももだけが残った。
「筋トレできないね」
「トラウマだよこんなん」
「そもそもボクゾンビだから、筋肉とか発達しないんだけどね」
「……そりゃそうか」
建設関係の労働用として使用されてるゾンビAIの中には、サイボーグ化してパワーアップしてるやつもいるらしい。
ゾンビだからって、あんまり肉体改造とかしちゃうのはなあ……。
「ボクも腕にロケットランチャーとか付けたいな」
「そんなやついねえよ」
人造人間16号かよ。
……翌朝、めちゃくちゃ筋肉痛になった。
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