第8話 掃除とお料理



「今日は部屋の掃除をします」



 バイト続きでしばらくサボってたから今日はまとめてやってしまおう。



「すらぐちゃんも手伝ってくれよ」



 前のユーザーが企業じゃなくて個人だとしたら、おそらく家政婦ロボット的な扱いだったはずだし、掃除もできるだろう。



「すらぐちゃんにおまかせあれ」



 ……なんかちょっと不安なんだよな。



「じゃあまずは洗濯を」



「おっけー」



 ……。



「ろーくん、たらいと洗濯板どこ?」



「いや、無いけど」



「えーでもト〇ロで使ってたじゃん」



 ウチは田舎のオンボロお化け屋敷じゃないから。



「じゃあ掃除機かけてくれるか。はいこれ」



「おっけー」



 ……。



「命令送ってるんだけど、全然掃除しないねこれ」



「それ普通のワイヤレス掃除機なんだわ。ルンバじゃねえんだわ」



「?」



 この子、もしや……



「……トイレ掃除、いけるか?」



「おっけー」



 ザーッ



「まず便器にお掃除してくれるエビと貝を入れます」



「ちょいちょいちょい!」



 水槽じゃねえんだぞ。どっから出したんだよそのエビ。



「すらぐちゃん、君……家事やったことないよね」



「……うん」



「なんで出来ると思った?」



「ボクの完ぺきな学習データで調べればいけるかなーって」



「クソほど偏ってるよ」



 便器にエビ入れるってどんなライフハックだよ。



 このあと半日かけてすらぐちゃんに掃除を教えた。

意外と素直にやってくれた。



「ルンバ買ってよ。ボク操作できるよ」



「端っこ掃除出来ないじゃん」



「じゃあ四角いルンバ」



「ねえよ」



 __ __



「お掃除おつかれ~!」



「うぇ~い!」



 掃除が終わったので、ごはんにする。ビールも開けちゃう。



「この鳥の焼いたやつ、うま!」



 すらぐちゃんは俺が作った



「すらぐちゃん、料理は作れないの?」



「ゾンビAIは料理関係はあんましやっちゃだめなんだ」



「へーそうなんだ」



 衛生管理的な観念で、料理とか医療関係にゾンビAIを使役するのは非推奨らしい。



「防腐処理してるんだし、別に感染とかしないのにな」



「陰謀論信じてる市民団体がうるさいんだよねー」



 ゾンビAIの特性上、アンチゾンビの団体は世界中に存在する。

これだけ科学技術が発達しても、非科学的な人たちは居なくならないもんなんだな。



「たまに陰謀論者のライブ配信中にスパムコメ流して遊んでる」



「……発信元特定されないようにしろよ」



 そんなんやってるからアンチが減らないんじゃ……。



「じゃあ俺が料理作るからさ、なんかレシピ調べて教えてよ」



「それ採用」



「えーっと、それじゃあ、今冷蔵庫にある食材で作れる、いい感じのツマミをお願い」



「かしこま!」



「神アイドルじゃん」



「まずセロリとベーコンを適当に切ります」



「セロリないよ。キュウリでいい?」



「いいよ」



 いいんだ。



「切った食材を炊飯器に入れます」



「おう」



「ここで魔法の粉を入れます」



 すらぐちゃんがザーッとダシ粉末を1袋ぶちこんだ。



「さらに魔法の粉②を入れます」



 すらぐちゃんがザーッと七味唐辛子を1瓶ぶちこんだ。



「…………」



「水を入れます」



 トクトクトク……



「それ焼酎なんだが」



「しばらく煮込みます」



 20分後~



「できた!!」



「うわ酒クサ……ってか辛……しょっっっぱ!」



「あれ? おかしいなあ」



「なに参考にしたんだよこれ!」



「アル中コロコロさんの動画」



 それは参考にしちゃだめなやつや……



「次からクックパッドとか見ような……」



「でもダシ粉末は料理研究家の人も推奨してる」



 酒飲みの配信者ばかりじゃねえか。



「適量ならいいんだよ適量なら」



 ひとつまみで十分なんだよ。



 AIにも苦手なジャンルがあるんだな。



「料理はろーくんのが美味しいからいいや」



「……下ごしらえくらい手伝ってくれよ」



「はーい」



 すらぐちゃんと作った謎の辛しょっぱい煮込みは、薄めてなんとか美味しくいただきました。

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