第7話 お買い物

「すらぐちゃん、買い物いこうぜ」



「いいぜ」



 なにそのノリ。



 すらぐちゃんと出会って2日しかたってないけど、何故かめっちゃ馴染んでいた。

一緒にメシ食って酒飲んだらもうマブダチや。



「なに買うの?」



「すらぐちゃんの服とか食器とか」



 拾ってきたときの服しかないのは流石にね。なんか未来人っぽい服。

今は俺のシャツとか着て、なんかダボっとしてる。

あとゾンビAIなのに普通にメシ食うし。もうAIっていうか、1人の女の子として扱わないといけない感じなんだよな。



「ボクこの服でいいよ」



「それは俺の服だから」



「ろーくんの匂い落ち着く……」



「やめろやめろ。いいからそういうの」



 買い物に、レッツゴーや。



 __ __



「ということで、ウォーキングに来ました」



「昨日も来たよ」



「君が勝手にバイト中に侵入したんだろ」



 俺が夜間警備のバイトをしている、大型ショッピングモール”ウォーキング”。

専門店のテナントがたくさん入っているので、ここに来れば欲しいものが大体揃う。



「バイトの特典で、ウォーキングで使える割引券貰ったからちょうど良かったんだよ」



「じゃあウナギ食べよ、ウナギ」



「君の服を買うんだよ」



 すらぐちゃんは花より団子らしい。



「服どこで買うの?ヴィレヴァン?」



「ヴィレヴァンはそこまで万能じゃねえよ」



 とりあえずコスパの良いチェーン店に来た。



「すらぐちゃん、どういうファッションが好きとかある?」



「なんでもいい」



 言うと思った。



「ろーくんの好みにしてよ」



「そんなん言われたら好きになっちゃうよ」



「ええんやで」



「なんJ学習やめろや」



 そんな感じでいくつか服を選んで、すらぐちゃんを試着室に突っ込んだ。



「どう? 着替えた?」



「うん」



 すらぐちゃんがシャッとカーテンを開ける。



「どう?」



「おーいいじゃん」



 ビッグシルエットのパーカーにショートパンツ。

ハイカットのスニーカー履いたら似合うそうだな……あとでABCマート行くか。



「ろーくん」



「ん?」



「こういう服が好きなんだ」



「え……まあ」



「ふーん」



「お前そのにやけ顔やめろ……」



 普通に可愛いのでちょっと反論が弱くなる。



「二ヒヒ。じゃあこの服にしよっと」



「おう……」



 俺の負けだよ。なんだよ。



 __ __



「うどんおいしー」



「いなり寿司もう一個買っとけばよかったなあ」



 服を買った後、靴屋に寄ってスニーカーを買った。

バスケシューズみたいなやつ。完全に俺の好み。



 今はフードコートで昼食タイム。



「ろーくんイナリ好きなんだね」



「いなり寿司は神の食い物だからな」



 うどん屋のサブメニューにあるいなり寿司をメインに食うタイプです。



「……やっぱちょいちょいチラ見されるな」



 ゾンビAIは世間にだいぶ馴染んできたが、基本的には人目に付かない労働用として使用され、個人所有のユーザーはまだ少ない。

その個人の中でも、ほとんどは自宅でのメイドさん的な扱いをしてる人が多く、俺みたいに一緒に出掛けている人は稀みたいだ。



「ボクが可愛すぎるからかな」



「くっそ前向きじゃん」



 見世物小屋的な考えには一切至らないらしい。



「えっへへ。似合うでしょ? ろーくんの買ってくれた服」



「そういうのどこで覚えてくるん?」



「AIネットワーク」



 そりゃそうか。



「いや、俺の好みで選んじゃったからアレなんだけどさ、ショートパンツで大丈夫だったか?」



 ゾンビAIは、なんだかんだ言ってもゾンビだ。

メーカーにもよるが、防腐処理によって肌が青白かったり緑だったりするので、あまり肌を見せないような服を着せていることが多い。



「ろーくん的には、ボクの肌色が隠すようなものじゃないんでしょ? じゃあこれがいいじゃん」



 すらぐちゃんはそう言ってフッと笑顔になる。



「めちゃくちゃ持ち上げてくるじゃん」



「アナタだけのゾンビAI、すらぐちゃんだから」



「なんだそれ」



「デザートにフォーティーワン食べていい?」



「いいよ」



 ごはんねだるのがどんどん上手くなるなこの子。



 すらぐちゃんは4段重ねのアイスを美味しそうに食べていた。



「あ、服にこぼしちゃった」



「さっき買ったばかりだぞそれ!」



 もうちょっと食い気以外に気使って欲しいんですが。

 


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