第4話 眠れる森のゾンビ
「……おはようございます」
もう夕方だけど。
夜勤バイトに合わせた生活のせいですっかり夜型になってしまった。
施設で過ごしていたときは強制的に早寝早起きだったんだけどな……
「……Zzz」
「うおっ! あーそうだ一緒に寝たんだった」
隣に謎の美少女ゾンビが居てビビった。
顔だけは整ってるわほんと。いや知らんけど。
「おい、起きてるか?」
「……起きてない……Zzz」
すらぐちゃんはまだスリープモードみたいだ(思考放棄)。
てか勝手にスリープモード入ったよなこいつ。
普通、起動とかスリープとかのモード変更って所有者が命令というか、指示するもんじゃないのか?
「おーい、すらぐちゃん起きろ。起動してくれ」
「……起動にはユーザー認証が必要です……Zzz」
いやもう起きてるだろあなた。
「ユーザー認証ってなんだよ」
パスワードとか何も設定してないぞ俺。
「本ゾンビAIは、起動に”眠れる森の美女システム”を採用しています……Zzz」
「……眠れる森の美女? あの童話の?」
それがAIの起動と何の関係が? って、まさか……
「……ちゅーして」
「アホ言ってないで、はよ起きんかい!」
ぺしっとすらぐちゃんの頭をはたく。
「……おはよ」
「最初から起きてたろ」
「今起きた」
ホントかなぁ(ゴ〇リ)
「さっき頭ぺしっとしたのは照れ隠し?」
「やっぱ起きてたんじゃねえか」
__ __
「「ごちそうさまでした」」
二人で夕ご飯のカツカレーパスタを食べる。
これから俺はバイトなのでちょっとガッツリ目にした。
すらぐちゃんは別に仕事とかないけどガッツリ食べた。
「じゃあ俺はこれからバイト行ってくるから。とりあえず自由に過ごしててくれ。あ、部屋のもん壊すなよ」
「冷蔵庫の杏仁豆腐食べていい?」
「いいよ」
「エチルアルコール摂取してもいい?」
「え? なにそれ」
「ゾンビAI用のガソリン? みたいな?」
ガソリンて。
「そんなんウチにないけど」
「その辺は大丈夫」
自前か? すらぐちゃん俺が拾ったときなんか持ってたっけ?
「まあいいや。いってきまーす」
「いってらー」
2chとツイッターで言語学習したんかこいつ。
__ __
ショッピングモール「ウォーキング」。
田舎の郊外にある、よくある大型の商業施設だ。
俺はここで週4日、夜間警備のアルバイトをして生計を立てている。
「おはようございまーす」
「おーう羽香森、おはようさん」
職場に到着したので、日中シフトの先輩と引継ぎをする。
「昼間はなんかありました?」
「いつも通りなんもねえよ。ヒマなじいさんばあさんが勝手に世間話してくるくらい」
「それは確かにいつも通りっすね」
夜間の警備に至っては、お客さんもいないのでそんなイベントすら起こらない。
「そんじゃ、後はよろしく」
「うっす。お疲れさまでした……あっそうだ先輩」
「ん~?」
「エチルアルコールって何か知ってます? ゾンビAIに必要なものらしいんすけど」
先輩は大卒で、たしか化学系の学部卒だったはず。
それでなんで警備員のバイトなんかやってんのかは不明だが。
「え、羽香森、ゾンビAI買ったんか!? 高かったろ。中古のやつか?」
「いやまあ、そんな感じです」
中古というか、無料回収というか。
「ほう、やるなあ……あ、それで、エチルアルコールだっけ、そりゃお前、エタノールのことだろ?」
「エタノール」
「消毒用アルコールとかの成分だしな。あと酒とか」
「酒……酒?」
「あ~酒飲みたくなってきた。今日は居酒屋で一杯やるか。それじゃお先~」
「あ、お疲れっす」
エタノール……酒……。
そういやウチの冷蔵庫にもまだビールの買い置きあったよな……。
「なんか嫌な予感がするんだが」
俺はソワソワした気持ちのまま、夜のショッピングモールへ向かうのだった。
……。
ぺた……ぺた……。
「ウィ~……ヒック……ろーくん、どこ~……」
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