日傘の彼女

蒼田

1.

 ――それに気が付いたのは帰った後だった。


 夏の暑い日、会社を出て家路に就く。

 夜は18時を超えているというのにまだ太陽は高い。

 シャツを汗でびっしょりにしながら、混雑した中心部を抜けて一息つく。


 ガタン。


 道の途中にあった自販機でスポドリを買い、口をつける。

 体の中に水分が行き渡る感覚に浸りながらも再度足を進めた。


 俺が通勤に使っている道は人通りが少ない。

 といっても住宅が少ないわけでは無く、むしろ周りから子供の声や夕食の匂いが漂ってくるほど。

 気味が悪い程に人が通らないのだが、特に何か出るという話はない。

 よってこうして会社への行き来に使っているのだ。


 時々スポドリを口につけて水分補給をしながら歩いていると、黒い日傘をさした人が見えた。


 ――誰だ?


 と思うも、「いや少ないだけで人が通らない訳ない」と考える。

 長いスカートの彼女も暑いのか日傘をさしたまま立ったまま。

 この暑さだし少し休憩しているのだろう、と思いながら俺はそのまま家に着いた。


「そう言えば――」


 ――影が無かった、な。


 気付いた時、体中が震えた。


———

 後書き


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日傘の彼女 蒼田 @souda0011

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