少女?を拾う
なんてものを見てしまったんだろう。
僕の名前は宇野宙斗(うのそらと)。
しがないフリーターだ。
空は曇り。
今にも降りそうだなという天気。
まさに僕の心を映し出している。
バイトも終わって家でゴロゴロしようかな、なんて考えていたところに。
とてもじゃないが目を疑うような光景を目にしてしまった。
そう。修羅場だ。
それも、かなーーーり。重めのやつ。
いわゆる痴情のもつれ。
なんでそんなことがわかるのかというと。
男一人に女二人が路上で口論していた。
一部の内容を抜粋する、
『浮気してたの?!最っ低!!!」
『これは違くてだな。ちゃんと話そう、な?』
『なんなのよ!この女!!!アタシよりもこの女とやってたの?!』
『待ってくれ!話そう…』
『『黙れ、クソやろうが!!!』』
『ギャーーーーー!!!!!』
ボコスカと殴られ蹴られリンチに近い猛攻。
『二度と顔見せんな!!クズやろう!』
『失せろ!テメーの顔なんざ二度と見たくない!』
・・・・・・と、
このような場面を目撃してしまったので。
とりあえず男の身の安全のため一応、警察を匿名で呼んでおいたけど。
その後のことは知らないし、知りたくもない。
阿呆なやつとは思う。
女性が怒るような行動をしてしまうことや、
注意力の欠片もなさそうな服装や言動。
恋愛というのは人を選ぶものでもあり、
反対に選ばれるものでもあると思う。
お互い欠点があるから補うとかいうけれど、
欠点は欠点で何も変わらない。
それがマイナスに働けば、あのしょうもない事件に発展する。
ほんとうにアホくさいよな、恋愛なんて。
さぁて、今日は久々に酒でも買って嫌なことは忘れてしまおうか。
近くのコンビニに立ち寄る。
少し買いすぎたかな?と思いつつ、
コンビニから買い物を終えて出ようと思ったとき。
ポツポツ。
「雨、か」
降ってきてしまったようだ。
幸い折りたたみ傘があったから、買わなくて済んだ。
しかし、時間経過のたびに雨足が強まる。
収まるまでもう少しコンビニで待てばよかっただろうかと、少し後悔。
だが、雨の日は嫌いではない。
普段の見えている世界が水に呑まれるような錯覚に心が躍る。
歩みを進めていると。
たまたまだが、近隣の公園へ向かう裏道を見つけた。
「たまには寄り道してみるか」
ふらっと、何かに引き寄せられるように。
普段は目にしないはずの公園へと足を運んでいた。
公園に着いたが当然雨だから誰もいないようだ。
なんだか普段使われている遊具を丸々貸し切っている気がして、微かな優越感な浸る。
ズボン下はかなり濡れてしまった。
たまにはブランコでも漕いでいこうか。
そう思っていたが、僕は近くの滑り台の下に誰かいることを発見した。
恐る恐る近づいてみるとそこには、女がいた。というより制服?まさか学生?
なんでこんなところに?
「キミ、何をしているんだい」
面倒ごとはゴメンであるが、見かけた以上。見逃すのは良心が痛む。
「・・・ほうっておいてください、…どうでもいいんです」
全身はびしょ濡れ。
いろいろ見えてはまずいものが透けているが僕は分別のある大人。
ガキ相手に欲情は抱かない。
だがこれはいわゆる訳アリなのだろうか?
イヤだなー、やはり声をかけたのマズッた。
けれどもう遅い。ならばやることはひとつ!
「ほうって置けるわけないだろう!ずぶ濡れじゃないか!…家まで送るから」
「・・・帰りたくない。ここにいる」
まさかの家出少女か…、なんでこう。不運が重なるんだろうか?今日の心の天気は、曇りのち雨に決定だ。
「はぁー、仕方ない。ならウチ来い。身体あっためたら帰ればいい」
「そう言って、私の身体を弄ぶんでしょ?最低…」
人の親切をなんだと思ってるんだろうか。
「じゃあ警察を呼ぶ。それで保護してもらうまでここにいるから。それでいいな?」
「警察はだめ!!お願い!それだけは…」
警察沙汰にはしたくないらしい。
本格的に複雑な状況みたいだ。
「とにかく風邪をひくと自分が一番困るだろう。大人しく従っておけ」
「・・・はい」
こうして、僕は素性不明な少女?を拾った。
これ絶対ダメなやつじゃん。
どうか通報されませんように。
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