古畑光暉(橋本光輝)

1.概要

 古畑香織の実兄。本編開始時点では錫見原市内で失踪してから約1年程が経過しており、香織がTwitterアカウントを作成するきっかけとなった人物。

 錫見原市の存在を固定する柱のような人物で、本編中では市の奥底で眠っていた。また、錫見原市に当初存在していた人々の多くは彼の築いた団体やその信者である。

 現実世界でも医学生であり、生来のルックスと口の上手さで人望も厚かった。それ故、複数の互助サークルの運営などを行い、特に十代の少年少女や、その親兄弟をメインとした人権保護団体を作るまでに至っていた。この団体の一部が宗教化しており、そこから香織の入院費などを集めていた。

 また、人間を惹きつける中で男女問わず深い関係になることも多く、その中で鈴美のように妊娠させた女性も多くいた。殆どの場合は別の男性の子供であると信じ込ませるが、鈴美だけは胎児を脅迫に利用したため、存在を危険視していた。

 現実世界での団体運営においては、井森誠之介から宗教に関する手解きを受けた他、牛頭家から経営学などを学んでいた。そのため組織運営に携わる人間との関係があり、明屋慈畢愎神はこの人脈にいる人物らを錫見原市の自治体運営者として引き寄せ、取り込んだ。

 

2.パーソナリティ

 表向きには大胆で明るいカリスマ性の強い人物であるが、実際は他人を見下すことでしか自分を律することが出来ない矮小な人物。自己評価は高いが自己肯定感は低い。本人は「妹を愛している」という一種の自己暗示で誤魔化していたが、根本的には死の縁にある妹でさえも地獄のような家庭で精一杯生きる自分という演出のためのアクセサリーでしかなかった。

 金のために再婚しておきながらその金を浪費し娘をいなかったこととして扱う父と継母から逃げ、長い入院生活でも文句ひとつ言わずただこちらを観察するだけの不気味な妹から逃げ、自分の本質を見抜いていた妹の友人から逃げ、無限の愛を望む少女とその胎にいる実の子供から逃げ、自分を動物園のボス猿程度にしか見ていない妹と同じ目をした少年から逃げ、最終的には矮小な精神を持つ自分と自分が作った全てのものから逃げた。そういった意味で、本作の中でもあらゆる部分で「逃避」が大きな要素となっていたキャラクターである。


3.補足情報

 菅沼と鏡合わせになるようにデザインしていた。二人とも基礎ステータスは高い上、特に「他人を見下すことでしか自分を律することが出来ない(自己評価の軸が自分の中ではなく他人との相対にある)」という部分はそっくり同じである。ただし、菅沼の場合は「自分の精神を理解した上で行動いていた」のに対し、彼は「自分が矮小である事実から逃げた」ので、全く異なる精神に見える結果が出力されていた。

 また、名前の漢字が古畑性(父再婚後)と橋本性(実母性)で異なるのは、実父が実母の実家と縁を切る際に改名させ、完全な別人として生きることを強いたためである。元々、橋本家では跡取り孫として育てられていた側面もあり、これが彼の大きな自尊心の一部を形成していた。


4.錫見原市消滅後

 誰もいない自宅で目覚める。錫見原での出来事は自分が市の奥深くで眠るまでは覚えていた。数時間後に井森誠之介から連絡があり、香織が危篤であることを知る。その連絡を以て井森家に香織の葬儀等を依頼し、自らは都内のホテルを転々とした生活を始める。香織の葬儀が終わった頃、残った資金で海外へ逃亡した。ほとぼりが冷めた頃に帰国し、古畑家が所有していた土地や屋敷などを売却、一部を井森響介に譲渡した。

 最終的に彼が何処へ向かったかは誰も知らない。

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