第28話 三人の作戦会議
「失礼しまーす」
ロキの執務室。扉の方面以外の壁はすべて本棚、本、書類を綴じたファイルで覆いつくされている。
補佐官は女王以上に多忙で、先日の書類チェックや議事録、貴族へ向けた議会の資料作成という事務的なものから長からの窓口や、地方へ赴きちょっとやんちゃな方々を
しかしそのどれもロキという補佐官はそつなくこなしていく。
(しかも、倒れてからまた仕事を増やしてしまったからなあ)
聖女の後始末、が最近までそれに足されていた。
「ようこ、そ」
私を見て、女性ロキは喜んだが、後ろにいたリュカに少し嫌な視線を送っている。
「わたくしは、陛下と二人でお話ししたかったのですが」
ロキにしては珍しく、私の腕をぎゅぅっとつかんできた。甘えるような表情が新鮮…
「たまたま近くを通りかかったら、陛下がいましたので」
それは嘘だ。というかリュカもわざとこんな風に言っている。リュカと過ごしているときにロキからの連絡があった。思うところがあったリュカは自分も参加したいと言ってきたのだ。
「理由になっておりませんわ」
「まあまあ。私としてもそろそろかと思っていましたので。経過報告に参った所存でございます」
「…チっ。フィリップ、彼にもお茶を」
「かしこまりました」
明らかな舌打ち。ロキとリュカは相性が良くないんだよな。そんな二人の様子をロキの執事フィリップさんは楽しそうに眺めている。
部屋の真ん中のソファに腰かけた私とリュカへロキは資料を見せてくれた・
「これって」
「陛下にチェックするよう依頼された書類です」
「こんなに」
リュカは初めて見るのだろう。その山は机に置くとドスン、と音をたてるほどの量である。
「それは一日分ですね」
「は?」
そんなに見ていたんだ。私
「内容も、確認してみてください」
「…期限が遠いものがほとんどですね」
「わたくしも確認しましたが、急を要さない慈善事業の承認から王城への営業など至極どうでもいいものも多くありました」
そうなのだ。チェックした時にそれは知っている。それに苦言を呈しようとしたのだが「処理しなければいけないものがまだこんなにあるんですよ」という言葉に納得してしまった。
「その書類の増加に関してだが、ある書類の承認を遅れさせるためではないかと思っている」
今度はリュカが自分のファイルを広げ、テーブルに置いた。
そこには「聖魔力とある紅茶の危険」というタイトルの論文だった。
この間、飲んだ紅茶の銘柄が記されてある。そのお茶は聖魔力と相性が悪いこと、ひどい後遺症が残ることが記されてあった。
そういえばこの間のお茶会の時にはその紅茶はもうなかった。流行りが廃ったのだと思っていたのだが、リュカの配慮により出ていなかったのだろう。
「陛下はこれを知らずにいたのですね」
「…ええ、今見せてもらうまでは」
「これは3か月前、研究会で発表され、2か月前に陛下へ提出してます」
「遅いな、陛下の目に届くのが」
「普通、遅くても1か月半ほどで陛下もしくは私が確認します」
「もしもそれが陛下の目に触れ、あの香料が出荷停止になったら」
「陛下は倒れずに済み、聖魔力も損なわなかった…?」
ここまでのことが一つの線となってつながっていく。
「なぜそのようなことを」
「わかりません。しかし聖女の文通相手もその者だとしたら、そこからだいたいのことがわかってきました」
アリナ嬢の供述が真実であればね、と彼は言った。
内通者からもらった手紙は溶けるように消えた。これは魔法と考える。
紙が人の目に触れると液体になっていく。もともとあった手紙に水魔法を施したものではなく、それは何重にも魔法をかけているシロモノです。そして手紙の受け取り方。風魔法もしくは転移魔法を使うとなると上級魔法が使える人間ということになる。
「人を使って魔法を施したんじゃないの?」
「手紙は偏見に満ちた内容のモノがあります。陛下に対する敬意もないため、人に頼むとなるとリスクが高いでしょうね」
「なるほど…」
「そのような魔法が使える人間はなかなかいません。有名なところではニール様や王立騎士団魔法部のノルズがそうでしょう。しかし彼らではない。そうなると」
「もしかして、あの」
「…女帝、ということになるわね」
とわきら1は王試験がメインの物語。
王試験は聖魔力をもった数名の王候補が魔法の修練、礼節や教養を受ける。
それを受けたのはロキと、
彼女は今はやりの悪役令嬢ではなくライバル令嬢。
「レイヤ・コンスタン嬢…!」
「その可能性が高いかと」
「でも、なんで彼女が」
「今からそれについてお話していきますね」
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