第17話 かのじょのかんがえたかんぺきなけいかく
防音の魔導具を使ってから、リュカへ私が得た情報を伝えた。
ディンやヨルドとのこと。ロワンでの出来事。再生の女神の伝承、召喚魔法のこと
「だいたいのことは分かった。これから、どうそれを具体化していくかってところだな」
プライベートモードのリュカが電子端末に情報を入力していく。
「俺個人から、ディンやヨルドに連絡をする。奴らが何を考えているか、確認しておきたい」
「悪いことではないと思うけど…」
「それはわかってる。奴らがなぜ動いているのか、目的が知りたい。それに…釘を刺しておきたいし」
「…リュカ?」
それってやきもちですか。私の心はあなたと共にあるのに(いやドキッとしたのはゲームの再現や前世の私に生身の男性とのかかわりがなかったからであって他意はないですほんとに)
「お前はお前が思っている以上にみんなから大切にされてるんだよ」
「リュカ…」
「だから、倒れるほどの無茶はやめてくれ」
「でも、あの時は立ち眩みとか、めまいとは違う感覚がしたの。強い力で引っ張られるような感じ」
「…強い力」
「………明日からまた忙しくなりそうだ」
それだけつぶやいたリュカは何か思い当たったようで、目元は怖く、でも口元は笑っていた。
アリナ嬢は聖女としての役割を本当に果たさないつもりだろうか。
聖女という肩書きが欲しかったから、長達にお近づきになりたいから、この任を引き受けたのだろうか。
(ゲームのアリナちゃんとはかけ離れてるんだよな…なんだか悲しい)
私はとわきらが大好きだから、とわきらの世界を損なわないようにしてきたつもりだ。
(でも、芸能人だってイメージと違うことがあるんだし、そういうものなのかな)
ともかく私は自分にできることを探していくだけなんだけど。
もやもやしながら、眠りについた。
次の日。
攻略メモ
私室から中庭へ向かう廊下で、それを見つけた。
(え、なんで…)
それは、この世界の言葉で書いてはいなかった。
漢字とカタカナ…私の前世の言葉で書いてあったのだ。
恐る恐る、手に取る。
ご丁寧に名前が書いてある。
アリナ・ルル―、と
もしかして
(にしても、名前書くか…?)
転生者で別人格といえば合点がいく。
今まで出会ったキャラクターはゲームとの大きな違いを感じなかった。
彼女には明らかな違和感があった。
異性が苦手で、使命に一生懸命なアリナちゃんはいなかったのだ。
「あっ…」
風でページがめくれ上がる。飛んでいきそうなそれをつかんだ。
見たくはなかったけど不可抗力で、それに視線を落としてしまった。
『ルドル様←クール金髪
プレゼント:高級羽ペン。外国の書物
好きな飲み物:エスプレッソ
一言メモ:貴族の代表なので、世の中の酸いも甘いもわかっている?ワイロを渡せば少しはよく見てくれると思う』
(お粗末だ…)
見なきゃよかった。いやプレゼントや好きなものは合ってるよ。
なんだこの一言メモ。主観というか偏見が入りまくっている。攻略なのに思うとか書いてるし。
しかもご丁寧に攻略キャラみんなの分ある。(手が滑ってすべて見えちゃった☆)どれもが好きなものやプレゼントは合っていたが、一言メモは彼女の意見だった。
転生者だろう、という確信はますます強くなる。
でも私のようにオタクというほど、知識や関心はないのだろう。
最後にリュカのページをじっくりと見た。
リュカ様☆
プレゼント:最新の腕時計。充電式電池
好きな飲み物:栄養補給ゼリー飲料
一言メモ:顔面やばい。なんでこの人センターじゃないの?逆ハー目当てだけど、リュカ様は早めに攻略したい♡
「ふーっ」
情緒がおかしくなりそうだ。
前半の文章は激しく同意だけれども。
(逆ハー目当ての上に早めにリュカを攻略…だと?)
(とわきらは一人一人のシナリオが素晴らしいし、使命がある中で恋愛のことを思い悩む主人公の様子や、人々、環境が変化していくのがいいのに。逆ハーレムエンドなんて都合の良い展開、みんなに失礼!)
とわきらは攻略対象を決めたら一人シナリオをじっくりと楽しむゲームだ。
ゲームでは一人のルートごとにしか進めない。だがこれは現実だ。私たちは実際に生きている。場合によっては逆ハーレムという誠実ではない関係性(私の主観ね)が出来上がってしまう。
(それにリュカを巻き込むつもりなんて…)
私は、昨日までは。
ほんの少し、彼女を監視することを申し訳なく思い、おかしな態度については「最近貴族になったばかりだから、礼節はわからないのだろう」と思っていた。そしてそれを場合によっては許そうと。
これのおかげでそういう気持ちも払しょくされた。
ある意味、攻略メモには感謝する。
(勘違いされているようですから、教えてあげましょうね…
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