第15話 バチバチの口論を期待してたらすみません。


☆とわきら キャラ紹介☆

スルト・ナヴァール

深い赤の横分けの短髪に橙色の瞳。

炎の魔導師。王立騎士団団長。魔導師でありながら、武器を使った攻撃が得意。まれに出現する魔物の討伐に派遣される。成人済みだが、児童向けの冒険の物語が好きで、いつか偉業を成し遂げられたらと思っている。巻き込まれ体質で、ファンからは「貧乏くじ団長」とひそかに言われている。








彼女アリナが目に入った瞬間、ヨルドとの約束を思い出す。


◇◇◇


「いいですか、陛下。もしアリナ嬢と会うことがあっても、自分が女王陛下であることは隠してください」


「陛下は病に臥せっているということになっています。それが余計にアリナ嬢を助長させているのだと思うのですよ。ご自身の立場をよくわかっていないようなので、彼女にちょっとお灸を据えたいんです~」


「それに今陛下が出て、お話ししたとしても。彼女にはあまり効果がないと思うのですよ~

彼女、自分の力に自信がありますからね~言い方が悪いかもしれませんが、脅しに使うかもしれませんし」


「まあ、会わないことが一番なんですけどね~陛下の心の平穏のためにも…ね」






◇◇◇







「ちょっとアリナ様、図書館は走らないで下さ……」


彼女を追いかけてきた騎士団長が固まった。彼女がノルズに抱き着いたからだろうか、それともじょおうがここにいるからだろうか。


「この間、騎士団の皆様にご迷惑をおかけしたようで。そのおわびをしたくて…」


色々とツッコミどころが多すぎる。

まず彼女はTPOに応じた対応ができていない。いくらここが人がいないコーナーとはいえ、声の大きすぎる。私なんか最初っからいないもののように話している。

そして「ご迷惑をおかけした」ってなんだ。人づてに聞いたのだろうか。まるで他人事だ。それは保護者や周りの人が言う言葉で、当事者が言うべき言葉ではない。

唯一その後ろで騎士団長がアワアワしてたのが申し訳ないけど面白く感じてしまった。


「あーアリナ嬢、その気持ちはいいんだけど」

「でしたら、是非!早く出ましょう」


小姑みたいでこういう風に思うのは嫌なんだけど。

本があまり好きではない人からしたら、つまらない場所かもしれない。でも今の物言いはどうなのか。


(…いやいや。せっかく私のことを石ころのように思っているのだから、聞こえなかったことにしよう)

護衛でついていたはずのノルズは絡まれ、それをスルトが止めているけど。

そんなことにかまけている時間はないのだ。


「あー、それに僕は今仕事中なんだ。とある事象について調査しているんだよ。だから今はお付き合いできないんだ」

「そうなのですか…」

「そう、またの機会にお願いするよ」


ノルズ、困ってる。できるだけ誠実に断ろうとしているけど、それが勘違いしてしまう原因になってるの知らないんだろうな…

一瞬落ち込んだような表情を見せていた彼女だけど、すぐにぱあっと表情が明るくなった。


「そうですわ!その調査というの、こちらの司書へ頼んではいかがですか?」


アリナ嬢以外の皆が固まった。


(………)


名案なの?すごくいい笑顔で言ってるけど。

そして、私を見て言ってる。私、司書だっけ?


「図書館のことは司書が詳しいですし、調べ物はこちらの方に任せましょう!」


頭すっごいなこの子。

お詫びって相手の仕事中断させてまで行うことじゃないと思うんだけど。

それに騎士団や司書にも機密情報があるっていうの理解してないんだろうな。

それを受けるのなんてありえないんだけど。

でも、それを受けるだろうって思っているんだろう。


「私は構いませんよ。どうぞ行ってきてください、

「!」


(訂正するな)

彼らにそう、目くばせをした。彼女がなら、私は知らせていただろう。だが、目の前の彼女には知らせてはいけない。


(彼女に逆らうな)

断ってみてもよかったかもしれないが、これは施設へ迷惑がかかりそうだから退場してほしいという気持ちでだ。




「ありがとう、司書さん♪」

希望通り、退室していく彼女と二人を見送った。

両手にイケメンがいるからなのか、彼女はとても上機嫌だった。二人は何か言いたげだったが、怪しまれては困るので、さっさとご退場いただいた。



「…さて、続きを調べなくっちゃ」















一通り調べたが、本からはいい情報は得られなかった。

ノルズから聞いた召喚魔法が、一番の収穫だ。

だが現実的ではない。どうしたものか…


ふと外を見るともう空が橙色をしている。

時計を見ると終業時刻までのこり数十分だ。早く帰らなくてはロキに心配をかけてしまう。


「そろそろ、帰りましょうか」

席から立ちあがったその時。




「お送りしますよ。陛下」


ヒュっと、声にもならない音が出す。

背後からでもわかる大好きな声がした。

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