第13話 間章~3人の憂鬱
①影の失態
影は女王補佐官の使いである。
影は複数いる。補佐官の手足として調査をしたり、尾行や監視の役割を与えられる。
(ええええー)
女王監視の任を与えられた赤は非常に困っていた。
女王陛下が何者かと入れ替わり、脱走しようとしている。
すぐに報告をと思ったのだが、赤の後ろには雷の長がいた。
…その手はスタンガンを持って。
「陛下はいつもと同じく、私室で休んでいた。今日はそうやって報告するんだ」
(私を脅そうとは、ロキ様にのみ仕えし身だ。そんなことに屈するものか)
「そういえば君は任務中、ずいぶん楽しんでいるようだな。昨日の陛下の監視中にこんなものを観るとは…」
(なっ、どこでそれを…)
「コレ、仕事用に支給された端末だろ?国から支給されたものを私物化してこんなコトしてたら、厳しいロキ様はどうされるのかな〜」
(くっ…回線を読み込んで知るとは卑怯な)
(仕事で支給されたブツで私的なものを見ておいて何言ってんだコイツ)
ディンでなくとも、赤の迂闊さには引くだろうし「補佐官はこんな奴雇っていて大丈夫か」と思うだろう。
「とにかくだ。お前がこうやっていつもとおなじ報告をするならこのことを公にはしないでおいてやる。他の長たちに話をつけてあるから、護衛がわりになるだろう」
(しかし、陛下の御身に何かあったら…)
「ないない。万が一襲われた時のシールド発生装置を持たせている」
(むう…)
「それにお前には拒否権はないはずだが?」
(だが…何かありそうな気がしてならな
「ロキにコレ見せてこよう」
(わかったわかったからそれもう消して!)
図らずとも、この赤の嫌な予感が的中指定しまうのであった。
②ある騎士団員は夢を見た
俺はラッキーだ。
聖女様の護衛につくことができたから。
炎の長であり、騎士団長のスルトさまから直々に聖女アリナさまの護衛について欲しいと依頼があった。俺は二つ返事でこれを了承した。
聖女アリナさま。任命の儀式でお見かけしたその姿は天使のように愛らしい。
彼女を見かけた時からなんとかしてお近づきになれないかと考えた。この話はまさに運命だ。
俺は平民だが、騎士団は身分に関係なく、功績を上げれば昇進できる。彼女に釣り合う男になれるはずだ。
彼女の護衛当日。
「今日はどうぞよろしくお願いします」
にこりと微笑む彼女。ああ、背景に花々が見えているよ。
「早速なんですが、お願いしたいことがあって」
どうしたんだろう。具合でも悪いんだろうか。
…もしかして抱きかかえてほしいとかそういう類なのか?流石にそれは…いや彼女の頼みであれば引き受けることになるだろうけどな、うん。
…これは俺を試す試練なのだろうか。
彼女に釣り合う男になれるか、試されているんだな‼︎
ものすごい重いけど、これも愛の試練だというのであれば乗り越えて見せようとも!
「アリナさま…ところでこれは何が入っているのですか?」
もうすぐ目的地に辿り着く。予定していた時刻よりも大幅に遅れてしまったのは後で騎士団を代表してルドルさまへ謝罪しよう。
「それはルドルさまへの贈り物です。ルドルさまの好きな外国の書物なので。気に入ってくれるといいなあ」
(…いやいや。彼女はきっと純粋な女性だ。きっと遅れてしまったから、お詫びの品なんだろう)
「ルドル様に気に入ってもらえたら、次はスルト様ね」
「アリナさま?」
どうやらアリナさまは思ったことが口に出やすい性格らしい。
「ああそうだ。騎士団の皆様、今回のことで団長様へお礼がしたいので、今日の任務が終わりましたら団長様へお繋ぎできますでしょうか」
俺が見ているのはどこか違う星から来た人なのだろうか…
・・・・・・・・・・・
③そこは現在苦情受付所になりつつあります。
王立研究所。世界の気候を調べ、魔力のバランスを調査する。女王陛下の発する聖魔力を属性の長達と協力して流布していく。
それが本来の仕事なのだが。
「リュカ様、騎士団からクレームです!護衛で着いたのに荷物持ちにされたと」
「ルドル様から今日の聖女の出発時刻を知りたいと、問い詰められてます」
「聖女が使った荷物の運送で王城前が渋滞になっています」
ここ最近は聖女の後始末が多くなってきている。
いや、ほとんど後始末ばかりだ。
上の立場の者はその対応に追われ、慣れない魔力管理の仕事を下の者が負うことになり、非常に効率の悪い状況なのである。
そしてさらに彼が思い悩んでいるのは
女王についてだ。
彼にとって大切な人。過労ということだが、魔力が異常に枯渇している。
何かがある。そう思って調査をしたいのだが、件の対応に追われなかなか進まない。
(今、何をしてるかな)
思って、自分の疲れ具合に驚いた。
今まで仕事中にそんなことを考えたことはなかったのに。
(補佐官殿、なんとかしてくれないかな)
(あー、会いたい)
通信端末が鳴って心臓が跳ねる想いをするのは、もう数刻先のこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます