第12話 このおとぎ話はフィクションであり、実際の人物や団体と一切関係ありません


むかしむかしのおはなし。


とある神がいました。


神は退屈でした。神のいる世界は苦しいことや悲しいことはありませんでしたが、毎日が同じようなことの繰り返しで飽き飽きしていました。


そこで神は下界へ赴くことにしました。


下界は自分のいた世界とは違う楽しい刺激がたくさんありました。神は時を忘れて楽しみました。

楽しんで、楽しんで。

帰ろうとした時です。


神がふと目をやるとそこには病に侵され苦しむ人の姿がありました。

ふと、気まぐれに。

神はその力を使いました。


苦しむその人は見る見るうちに元気になりました。

それを見ていた人たちが神をあがめました。

病に苦しむ人は神へ救いを求めました。


神は苦しむ人を助けるためと、その力を尽くしました。


おかげで病に苦しむ人はいなくなりました。

しかし、一度手に入れた神の力を手放すのは惜しいと思った世界の王は、神を閉じ込めました。


そしてたとえ小さなけがでも、神の力を使うようになったのです。


神は自分のしたことを嘆きました。


そして、王へ交渉をしました。

「自分と同じ力を人に与える。その代わり自分を解放してほしい」


王はみすぼらしくなった神よりも、同じような力を持った人のほうが使いやすい、と思いました。

こうして神は解放され、天へ還っていきました。








「これが再生の女神の序章です」

「序章!?」

「再生の女神シリーズはおとぎ話の定番ですので、派生作品がたくさんあるのですよ~」

「なるほど…女神の与えた力、が聖魔力なのね」

「そうですね。再生の女神は自身への罰として人に報復はしなかったようです」

「再生の女神にお願いしたら、私の力が回復するんじゃないかしら」

「…あの~陛下?あくまでこれはおとぎ話で…」

「よし、王立の図書室に行かなくちゃ」


女神を閉じ込めたのがかつての王であればそれに関する資料があるかもしれない。

少し希望が見えてきた。


「陛下」

考え事をしているとぎゅっと、ヨルドが私の手を握った。


「あ、ごめんなさい。すっかり自分のことに夢中だったわ」

「もう少し、頼ってください」

「…え?大丈夫よ。それに今こうしてあなたに聞いたでしょう?」


握った手が少し強くなる。…ううう、恥ずかしいから離してほしい。それに私には心に決めた人が…


「ご自身のことを決められるのは良いのですが。もう少し、私たちにできることがあるはずです。もっともっと陛下の力になりたいのですよ。我々は」


「私が自分でやりたいことだから、大丈夫よ」

「大丈夫と、おっしゃりましたが!先ほどのように倒れられると…」

いつもの穏やかなそれとは違う、興奮しているような大きな声。


ヨルドは私が倒れた時、とても驚いたんだろう。

確かにお偉いさんが目の前で倒れられたら、過剰に心配すると思う。

…でも、私も譲れない。

「でも、できるだけ早く力を取り戻したくて…」

「私に、良い考えがあります。ですから」

「…いい考え?」

「できるだけ、迅速にあなたの力を取り戻して見せましょう」

「…本当に?」




ヨルドの計画を聞いて。

私は私室へついた。私の人形は役割を果たしてくれていた。彼女に感謝し、記録をしながら、私は今日のことを思い返す。

倒れた時。ぼんやりした記憶だが、強い何かに引っ張られたような。強制的に意識がなくなったような感覚があった。

(最初に倒れた時の感覚と同じだ)

あの時の記録を見る。


『侍女が持ってきてくれた、最近王都で流行っているお茶。

これが美味しくて仕事をがんばれる。

最近書類の確認、振り分けとサインがここ最近増えてきた。

持ち帰っても、量が多くなってなかなか片付かない』


『仕事が片付かない状態でレヴールに流布をした結果。倒れてしまった。

急に電源がおちたように意識がなくなった。

立ち眩みとは違った。魔力の使い過ぎはこういうことが起きてしまうんだ。

無理をしてしまったんだと反省。

結局ゲームと同じようになってしまった

とはいえ、仕事が抱えきれないほどあった状態でこういう風になってしまい

みんなに申し訳ない…』


(やっぱり同じだ)

正史では、過去の発達できなかった世界の怨念によって眠りについてしまう私。

(怨念がロワンでも発生したの…?)

謎は深まるが、今日はもう休もう。

体力を戻すためにはしっかり休むことだ。

明日は明日で忙しいのだから。







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