第11話 バッドエンドの先にある手がかり


『女王陛下を復活させるためには、あなたの力が必要なんです』


これは…ゲーム?私の視界はバストアップの補佐官のイラストに先ほど発せられた言葉が半透明の板に表示されている。


知っている。これはとわきら2のゲーム画面。ゲームも終盤にさしかかっており、いわば主人公の頑張りが評価されるシーン。この後育成画面が表示されて最低限の条件を満たしているか判定される。

『お伝えします。修練度は…28」

この数値は…低い、低すぎる。こんな数値見たことがない。久しぶりに見たリュカはとても冷たい視線をよこしている。


『力が足りません。残念ですが…あなたの聖女としての役割はここまでです』


これがバッドエンドか。とわきらが大好きな私だが、バッドエンドは初めて見る。

とわきらは誰かを幸せにしたくて楽しんでいたから。


画面が真っ暗になり。シンプルな白文字でロキの言葉が表示されていた。

キャラや女王エンドに力を入れているのか、バッドエンドは簡素なつくりなんだなと思っていると。



『やはり、あれではダメだったか』

『こうなっては仕方ない。再生の女神を召喚しよう』

『再生の女神?あのおとぎ話のか』

会話文だけが表示される。長や講師が全員いる中のでさすかにこれだけでは誰のセリフかわからない(音声もない)。



『…を…にして…』

『それは…が良い」


…ちょっと待って。


「とわきら2のバッドエンドトラウマすぎる」

「ハーレムエンド目指して魔力疎かにしたら聖女クビになるどころじゃなかったww」

「まあ本来は恋愛しに来てるんじゃないしな。でもこれはエグすぎる」


そんな呟きを前世で目にしたことがある。

…もしかして、このままいくとえらいことになるんじゃ…








「アイ様、アイ様!」

目が覚めると


心配そうに私を見つめるヨルドがいた。


「ヨルド…?」

「良かった…」

目が覚めたばかりだからか体がふわふわした感覚だ。


「ごめんなさい、気を失っていたのね」

「どこも異常はないですか?痛いところや苦しいなどはありませんか」

心配しているヨルド、迷惑をかけちゃったなと思いながら辺りを見回して、気づく。


「えっ、ちょっとほんとにごめんなさい」

「気になさらないでください」

「あの、違、大丈夫だから、おろしてください…」


(これは、ヨルドの神イベ、お姫様抱っこだあぁぁあ!)

恥ずかしさやら、イベントが起きた喜びやらいろいろな感情が入り混じって混乱しているけど。


(ヨルドのお姫様抱っこ…これは吟遊詩人というはかなく見えがちな職業のヨルドが、実は力も強くて頼りがいがあるよというギャップを見せてくれるイベント、それが今、再現されている…好感度は高くないはずなのに…これが緊急事態だから?)

「おろしません。このまま王城へ運ばせてもらいますよ」

「えっ」

「聖女の動きをあそこまで見たら、もう今日は満足でしょう…それに、こんな役得めったにありませんからねぇ」

「イベント再現は嬉しいけど、やっぱり恥ずかしくなってきた…)


見たことがないほどのいい笑顔をした彼は歩みをはずませている。


「いけない、またすっかり乙女ゲームモードになるところだった)

さっきの夢?で吟遊詩人である彼に聞きたいことができたのだ。





「ヨルド。再生の女神のお話を知ってる?」

「ずいぶんと古い話をもってきましたねぇ…ああこういう仕事ですから、多少は知っていますよ」

「教えてほしいの。私の力が戻るのに必要なことかもしれない」


本来(正史ルート?)であれば、発展できずなくなった過去の世界の怨念により呪いを受けた女王をアリナちゃんが聖所として魔力を高めていき、目覚めさせるのだが。

このルートは私の状況も違うし、アリナ嬢はおそらく機能しない。そのままだと魔力が戻るのはかなりの時間を有するのだろう。先ほどの騎士団を私物化したような振る舞いを見ていると時間をかけたくはない。

それであれば自分で手がかりをつかむ。そして自分で力を取り戻す。


「わかりました。少々長くなりますよ。ああ、あそこで休みながら話しましょうか」




そう言って彼は広場の噴水前にあるカフェテラスを指さした。









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