6 王女殿下もおかしい②

 三人とも歳が近く、親同士が懇意だったこともあり姉さま方も含めて昔馴染みである。

 一応アリシアより下の王女様方とも親交はあるが、それぞれ政務に公務に事業にと忙しくしているからか、今日この場にいるのは上から三人だけのようだ。


 ところで、どうせ自分には関係ないのでどうでもいいが、この三人は事ある毎に処女を自称している。

 よりにもよってこの世界で、このお三方ほど権・財・能を兼ね備えた女性が、である。

 女性がすべからくありとあらゆる力を駆使して男性を抱こうとし、抱いた男の数が一種のステータスにすらなるこの世界において、である。

 そんな彼女らが結婚適齢期に処女など嘘っぱちもほどほどにしろと言いたいところだが、彼女らの性事情はどのみち僕とはさして関係のない話なのでどうでもいい。



 「アルダー、おめでとう。 王家としては是が非でも貴方を王都へ招きたいのだけれど……相変わらずのようね」



 カタリナが慈愛に満ちた顔でこちらに微笑む。

 さすが第一王女ともなると作り笑顔も品格が違うな。その作りの美しさも含めて彫刻とか絵画とかそういう芸術のようにすら見える。

 やはり彼女のアバター感が拭えない僕は無難に愛想笑いで返せる。



 「恐れ入ります。 殿下にそこまで買っていただけるとは」


 「お世辞ではないわ。 貴方の腕は王都でも必ずや輝く。 私は伴侶としても貴方が欲しいけれど」


 「ご謙遜を。 私如きでは殿下のお隣に立つには些か力不足です」



 これは半分本音ではあるが建前で、より詳細に言えば王位の是非とは別に今後長らく国政に携わっていくだろう彼女の夫など面倒事にまで愛されること間違いなしで、素直にキャパオーバーというところだ。

 実際領政の手伝いで手一杯な感じがあるので、国政までは手に負える気がしない。



 「アルダー、私と一緒にならないか? 私なら何者からも守ってやれるし、何なら一生養ってやるぞ」



 続くはロゼリア。彼女は本当に(物理的に)何者からも守ってくれそうだし、多分本当に一生養ってもくれそうだ。

 その猛獣のごとき迫力と裏腹に心優しい一面もある彼女は恐らく伴侶となる男をこれでもかと大事に守りこれでもかと大事に甘やかすだろう。 別にこの世界では男女の形として珍しいケースではないし口説き文句としても珍しくはない。ギャップ萌え心がくすぐられる。が……



 (さすがにヒモはな)



 彼女の人のさを知っているだけに、ヒモに甘んじるのはどうしても気が引ける。

 多分彼女はヒモを飼うのに向いた人種ではあるし、そこに付け込んでダメ人間になってしまったとてなお愛してくれるだろう。 伴侶がダメンズに成り果てようとカバーしなお余りある有能さでどうにかすればいいと思っているし、どうにかしてしまう。

 彼女はやはりどうしても優秀で、だからこそ逆に申し訳が立たない。



 まぁ関係性の如何とは別に王族なので御免被りたいのだが。


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