第3-12話
ディレンブライトに寄生された冒険者たちが襲い掛かってくる。ノアとエリナは機敏に立ち回り、銃と土魔法を駆使して寄生者たちに立ち向かった。
エリナはその場に屈み、地面に手を当てる。
「土の魔法で足止めします!」
突進してくる寄生者達の足場が泥濘に変化し、足を滑らせてその場に転げ落ちる。
ノアは即座に引き金を引き、倒れた冒険者に弾丸を浴びせる。
放たれた銃弾は瞬時に寄生者の身体を貫き、動きを静止させた。
止めにエリナの土魔法が地面から鋭い杭を生み出し、寄生者たちの胴体を大きく貫く。
「嘘……まだ動くの?」
身体を貫かれた剣士の寄生者達は体から触手を伸ばし、出血させながら杭から体を放す。傷口は白い菌糸で覆われ、出血が止まった。
彼らは驚異的な再生力を持っており、負傷した部分が瞬く間に回復してしまう。
「そんな事はいいからどんどん攻撃して!」
ノアとエリナは冷静に状況を見極め、弱点を探りながら攻撃を続ける。
寄生者たちに襲ってくる度に、彼女達はそれに対応し、効果的な攻撃を仕掛けた。
厄介だな……。
後ろに控えている魔法使いが治癒魔法を使って攻撃を癒している。
私が狙おうとすれば前の二匹が盾になるから狙えない。
だとしたら私がこの二匹の相手をしてエリナにあの魔法使いを倒してもらうしかないな。
「エリナ、私が前衛の注意を引く、後ろにいる魔法使いをお願い」
「承知しました!」
ノアは抜刀し、寄生体へ向かって行く。
寄生体はノアの動きに反応し、触手を伸ばしたり肉薄戦を試みようと襲い掛かった。
しかしノアの身体能力はずば抜けている。彼女は容易く攻撃を避けながら石飛礫を投げたり、腕に装着しているクロスボウで矢を放ちながら適度な距離を保っている。
攻撃を食らわぬよう天狼疾走による歩行術で翻弄し、エリナとの距離を放していく。
「前衛がいなくなれば後は容易いです! ストーン・ブラスト!」
杖の先端から尖った石飛礫を射出する。
寄生体となった女魔法使いに石飛礫が襲い掛かるも、防御魔法によって防がれてしまう。
「防御魔法……」
胸元にゴールドプレート……私よりも一つ上のランクの冒険者さん。
防御魔法の展開も早いし、私と同様に治癒魔法も使える。
明らかに私よりも上位に位置する魔法の使い手。
でも、それが何だというのですか。
「行きます!」
☆
ノアは二体の寄生体と戦闘中だ。
エリナが戦いやすいように適度に攻撃をしつつ注意を引き付ける。
少しずつエリナとの距離を広げていき、ある程度の距離を稼いだ辺りで反撃を試みる。
「狼牙流剣術二の型――月影舞」
二体の寄生体へ強烈な斬撃を一撃ずついれる。
刃が人の身体を深く傷つけ出血する。
しかし傷口がぶくぶくと泡立ちながら白い菌糸により瞬く間に塞がれた。
本来であれば致命的な傷になっていただろうが寄生体は倒れないのだ。
魔除けの油があればもっと楽に倒せたんだけどな。
まあ寄生体は過去に何度も倒した事があるし、さっさと終わらせてエリナの護衛をしよう。
ノアは間髪入れず狼牙流剣術を叩き込む。
「十一の型:――
光のような一閃。
星のような煌めきを持つ斬撃が寄生体の身体を瞬時に三度切り刻む。
月影舞で与えた傷が癒える前に叩き込まれた斬撃は強烈。
ノアが繰り出した斬撃は寄生体の両腕と首を見事に切り落とし、襲い掛かろうとしてきたもう一体を蹴り飛ばす。
即座に銃を構え魔力装填機構を自動小銃に装着。
狙いを定め、後ろへ吹っ飛んでいった寄生体に向かって弾丸を放つ。
ズドン!
まるで大砲を撃ったかのような銃声がグロームスワンプに響く。
放たれる弾丸はバンガルフお手製の機構により威力が増大したものだ。
魔法により強化された弾丸は青白く光り、光魔法のような軌道を残しながら寄生体の身体を貫いた。
たった一発の小さな弾丸が寄生体の身体に命中すると拳大程の風穴を開ける。
ズドン! ズドン!
一発打ち込む毎に肩へ強烈な衝撃が走り、魔力装填機構から蒸気機関のような白煙が迸る。
三発程撃ち込んだ後で寄生体の身体はもはや修復不可能な程破損していた。
魔法により強化された弾丸は貫通力と威力が増している。
それだけではなく、魔法の攻撃が物理攻撃の後に続き、途轍もない衝撃として叩きつけられるのだ。
その衝撃は小さな爆発を起こし人の手足程度であれば簡単に吹き飛ばす。
三発も撃ち込まれれば元の形を留めるのは不可能だ。
身体がバラバラになった寄生体はギギギと異音を発しながら絶命した。
白い菌糸が懸命に修復しようとにょろにょろと動くが、数秒後に活動を停止。
ノアの斬撃により倒されたもう一体は、頭部が血痕を残しながらその場から逃げようと触手を動かしていた。
しかしそれはゆっくりと歩いてきたノアの踏みつけにより体液をまき散らしながら絶命する。
「さて……エリナの援護をするかな」
ノアはその場に片膝を立てて座り銃を構える。
奮闘しているエリナを照準器越しに確認し、引き金にゆっくりと指を添えた。
魔力装填機構は一日に五発、強化された弾丸を放つ事が出来る。
残り二発。
一発でも十分致命的な攻撃。
二発打ち込めば確実に殺せる。
ゆっくり、じっと射撃のタイミングを伺う。
エリナと戦っている寄生体は魔法使いだ。
お互いに魔法による激しい攻防を繰り広げていた。
そして――チャンスが訪れる。
エリナが攻防に負け、相手がその隙に魔法を撃ち込まんとしたその僅かな瞬間だ。
ノアは息を吸い込み、止め、引き金を引いた。
銃声と共に魔力装填機構から白煙が噴出する。
強化された弾丸は青白く輝き、真っすぐと標的へと向かって行く。
弾丸は見事寄生体の頭部に命中し、その部位を破裂させた。
風穴を開けた後、直ぐ様に破裂し肉片を周囲にまき散らす。
「ふぅ……。お前、なかなかいいじゃん」
ノアの言葉に反応したのか、銃が僅かに動いた気がした。
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