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ここに来る前、僕は海神にこんなことを尋ねていた。
『そういえば、なんで海の神様の神社で人間の力が手に入るんだ?』
『神社を作ったのは人間さ。神社をどうするのも、人間の気持ち次第ってとこかな。とはいえ、あくまでも海神の神社だから、破壊の力は海神である私が人間の抽象的な念をもらって、それを具体化して人間に与えてるって感じさ』
僕は破壊衝動を全身に巡らせた。近寄ってくる記者や僕と一定の距離間を保ちながら撮影を続けるカメラマンも無視して僕は御社殿の前に立つ。
手を組んで祈り続けた。頭の中には友人の顔も美しい情景も浮かべない。そこにあるのは、赤黒く塗られた『破壊』の二文字のみ。
血液が沸騰するような感覚に陥った。全身が燃えるように熱い。僕はその場で転げ回った。太陽も手伝って、体の熱は更に増していく。炯々と照らす太陽が今はただただ不快だった。
喉が渇いた。皮膚が焼けそう。このまま耐えることを諦めて焼死体になってやろうかと思った。実際に燃えているわけじゃないから死ぬことはないのだろうけど。
臓器が破裂しそうで焼けそうで、両方起こりそうで。僕の耐久値はとっくの前に無くなっている。だからHPで耐えている。
僕に無視されて泣く泣く諦めた記者やカメラマンはもうそこにはおらず、助けを呼べなかった。必死に砂の上を転げ回って、煮えたぎる血が冷めるのを待ち続けた。
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