第47話

子どもの中学受験の半年前からは、自分の勉強を減らして、子どものサポートを最優先にして過ごしていた。

無事、希望校に入学し、子どもが新たな学校生活に馴染んできた頃には、自分自身も、やっと大学卒業、待望の学位を取得することができた。


薬のきつい副作用、子どもの受験勉強、自分の勉強、毎日の家事。

なんとか、こなしてきた。

予定の4年ではなく、4年半になってしまったが、まぁ、なかなかの頑張りだったと、自分自身を褒めてあげたい。


だって、死ぬまでにやっておきたいリストの筆頭項目、「学位を取得する」を成し遂げたのだから。


やったぜ!


計画通り、認定心理士の資格を申請して、このフェーズは完了した。


次のフェーズは、社会的な「肩書きを持つ」ことにした。


ニュースを観ていると、専業主婦は「無職」とされているようだ。

それが、納得いかない。

毎日、中心となる誰かが、家事や子どもの世話をこなしているからこそ、「家庭」が安定して回っている。

それは、確かなことで、揺るぎない事実だ。

ただ、その労働の対価になる「賃金」が発生していないだけ。

決して「無職」ではない。


しかしながら、そうであっても、主婦は、社会的に「無職」とカテゴリー分けされる。

ならば、社会参加をすることで、「〇〇関係勤務の〇〇さん」になりたい。


以前から、ニュースで「被害者の、パート従業員の〇〇さん」という表現を目にすることがあったが、このカテゴリー分けに違和感を持っている。

どうして、「雇用形態」が「職業カテゴリー」になっているのだろうか。

そうであるならば、会社員は、「正規雇用従業員の〇〇さん」「非正規雇用従業員の〇〇さん」という表記になるのでは?

最近は、パートではなく「〇〇関係勤務」という自己開示を見受けるが、そのほうが正しいように感じる。


それはさておき・・・。


自分は、家事や子育ての「主婦業」をそのまま続け、仕事と両立するために、職種は決めていないが、パート勤務を希望していた。

しかし、久しぶりの仕事なので、リハビリが必要だろう。


働くって、どんな感じだったっけ。

充実感もあったけど、しんどかったよね。

しばらく離れていた、「働く」にあたり多かれ少なかれ生じる人間関係の「毒気」に慣れておかなければ。


そう考えて、前々から気になっていたボランティアの販売スタッフを、体験してみることにした。

数ヶ月お世話になったショップは、高齢の女性が多く、新人で相対的に若い方の自分は、しっかり「毒気」を受けさせてもらった。

そういえば、エグい人って、どこでも存在するんだったな・・・と、思い出させていただく貴重な時間になった。


リハビリを終了すると、ハローワークHPで、どんな職種の求人があるのか検索した。

今の時代、パート労働形態で多い職種は、どういったものなのか。

スーパーのレジ・品出し、ファミレスウェイトレス、清掃員・・・。

そのなかで「児童指導員」が目に留まった。

どんな仕事内容なのか検索すると、大学での心理学やその周辺の学びが活かせそうだということが、分かった。


いくつかアクセスし、自分の都合をできるだけ聞いてくれるスタンスの学童に、雇用してもらえた。

詳細は避けるが、希望を持って就職した学童は、残念ながら、子どもから指導員への暴力が蔓延し、子どものモラル崩壊が進んだ、伏魔殿だった。

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