第45話

前回の診察では、治療期間を5年にするか10年にするかを、次回の診察までに決めて欲しいと言われていた。


自宅に帰り、まずはネットで、再発リスクの数字を検索した。


「2014年にホルモン治療ガイドライン改定、10年治療選択肢追加」

「晩期再発のリスクの低減」

「術後15年目の再発リスク 5年服用群 25% 、10年服用群 21%」

「術後15年目の死亡リスク 5年服用群 15% 、10年服用群 12%」


ふぅん、そうなのか。

どちらにしても、この数パーセントの違いを生み出した「再発した人」に、自分がなってしまう可能性を下げたい。

たとえ数パーセントでも。

そこは、自分の気持ちに素直に、そして、貪欲に「生」にこだわりたい。

更年期症状は、相変わらず最悪だ。

それでも、一分一秒でも長く、大切な人と現世で過ごしたい。


10年服用を選ぶことにした。


「次の診察は信頼している医師を指名する」と決めていたので、今回初めて、受付で医師を指名した。

「待つことになりますが、いいですか?」と訊かれたが、もちろんOKだ。


たっぷり待ち、やっと診察の時間が回ってきた。

個室に入ると、満面の優しい笑顔で、医師は迎えてくれた。


お、お久しぶりです〜(嬉)。


先日撮った5年目のマンモグラフィーとエコーの画像を見ながら、「再発無し、問題無し」という診断を、医師から優しい笑顔で伝えてもらう。

一緒に喜んでくれているようで、胸が熱くなる。


そんなことだけで、患者は、救われるのだ。


治療期間を決める話では、

「再発リスクの違いはステージによって違うので、この場合は5年で約5%、10年で4%です。

1%の違いで、辛い更年期症状をあと5年耐えることを考えると、悩ましいところですね。

でも、ホルモン依存が強いタイプなので、生涯、再発リスクはわずかながらでも、ずっとあり続けます。

更年期障害については、2年前から、この病院にも外来が出来たので、苦しかったら紹介できますよ。

(薬に拠らない)本当の閉経が来たら、再度症状が強く出てくる場合もあるのでね」

と、しっかりとしたアドバイスをくれた。


う、嬉しすぎる(涙)。


こうも、医師によって違うのか(泣)。


か、神・・・(感謝)。


医師には、事前に考えていた通り、10年を希望していると伝えたが、これからもっと更年期症状が重くなったら、7年や8年で服用を終了してもいいのか、と質問もしてみた。


すると、「それでも、大丈夫ですよ。10年じゃなくても、数年長く服用した分の効果は、ありますから。体調が悪くて続けられなくなったら、いつでも止めていいですよ」

と、無理して頑張る必要はないことを提示してくれた。


そうですね、そうですね、そうですね〜〜〜〜〜〜〜!!!


そうします、そうします、そうします〜〜〜〜〜〜〜!!!


先生の親身なアドバイスと、笑顔で、身体も心も元気になりました!!!


「先生はお忙しい立場でしょうが、自分は毎回同じ先生に診察してもらいたいと思っているので、次回も先生を指名していいでしょうか」と聞くと、笑顔で「いいですよ〜」と返してくれた。


絶対する!!


そして、診察が終わり個室を出るとき、医師が背中に投げかけてくれた「お大事になさってくださいね〜」が、全身に沁みていった。


神・・・。

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