第44話

3ヶ月に1回の診察日。

数人いる乳がん担当医師の誰に当たり、診察してもらうかは、クジのようなものだ。

今回は、横柄な態度の医師に当たった。

こいつは、本当に患者を見下した物言いをする奴だ。


次の診察までに、治療の終了を5年と10年のどちらにするのか、決断してくれと言ってきた。


「以前診察してくれた〇〇医師から、5年と10年のリスクの差と、更年期症状の辛さを考えて、5年の選択肢もアリだと説明を受けているのですが…」と、横柄医師に返答しつつ、相談したのだが・・・。

即答で、「あれは、前の話。その後、リスクの数字が変わったんだよ。〇〇医師の時とは違うから」と、バッサリと会話を終了された。


以前の〇〇医師は、説明時にそれぞれの再発リスクの数字を提示してくれ、丁寧に説明してくれた。

しかし、この横柄医師は、標準治療の基準期間が変わったことは教えてくれたが、その根拠になった再発リスクの数字や、医師としての見解は伝えてくれなかった。


そんなノーヒントで、自己決定しろだと?!


心の中で、「こいつに質問をしたら、また横柄に返答されそうだな。帰宅してから、もう一度、自分で再発リスクをネット検索して、どちらを選ぶか再考しよう。そのほうが、マシだな」と思い、言葉を吞んだ。


偶然にも、診察の後に、また患者会が開催されていた。

折角なので参加すると、先ほどの横柄医師を「大好きだ、ずっといて欲しい」と話す患者がいた。


マジか。


人には、相性ってあるんだな。


今回は、看護師が患者会に参加していたので、「この大病院で、毎回、違う医師に診察されるのは、結構なストレスになっています。できれば、同じ医師に毎回診てもらいたいので、初めに検査を受けた個人病院への転院を考えているのですが、可能でしょうか」と聞いてみた。


すると、看護師から、「今、その個人病院は人気があって、新規患者の予約が数ヶ月待ちになってるんですよ。この病院は、△△医師と□□医師は常勤で、あとの2人は非常勤。なので、待ち時間が長くなってもいいのなら、受付で、常勤医師を指名して構わないんですよ」と教えてもらった。


そうなんだ。


患者が医師を指名なんかしたら、ワガママ患者として、クレーマー扱いされると思っていた。

ん?

クレーマー扱いされないとは、言ってなかったな。


どっちにしろ、また、信頼関係を築けない横柄医師に診察されるなんて、御免だ。


自分が信頼を寄せて、この病院で手術を受けると決めた、初診と手術をしてくれた△△医師とは、もう数年、会っていない。

会いたいな。

気持ちを聞いてもらいたい。


次は、クレーマーだと思われてもいいから、指名してみよう。

絶対に。


患者会は、得るものが多い。

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