第43話

初めて参加した乳がん患者会には、ファシリテーターの女性2人と自分を含めて、7人の参加者がいた。


ある患者は、自家組織を使った乳房再建を行なったが、日が経つにつれて乳房のサイズが小さくなり、再再建を行うか検討中という話をしていた。

再建直後と数ヶ月後の乳房の大きさの違い、ビフォーアフター自撮り写真を参加者達に見せて、こんな感じに変化したと説明してくれた。

今日初めて会う人の乳房写真を見ることに少し抵抗があったが、貴重な情報を得るチャンスだと思い、ありがたく拝見させてもらった。


それを見て、再建経験者のファシリテーターは、「あ〜、また数十万円掛かっちゃうね〜(笑)もう一回手術を受けないといけないけど、そういうこと、あるよ〜」と、とてもカジュアルな雰囲気でアドバイスをしていた。


そうなんだ。

萎んじゃうことって、珍しくないんだ。

そうなったら、また手術もできるけど、自己負担なんだ・・・。

知らなかった。


自分は、薬によって突然現れた、重い更年期症状について話した。

そこにいる参加者は、自分より年上にみえる人が多かったが、この話に関しては、拍子抜けするほど共感を得られなかった。

つまり、更年期症状は個人差があり、自分ほど重い症状に苦しんでいる人が、今ここには居ない、ということだったのだ。


なるほど。

こんなにも、個人差があるものなのか。

そして、自分はやはり症状が重い方だったのか。

そうだったのか・・・。


そのときはまだ、婦人科を受診していなかったため、ファシリテーターや他の参加者達から、受診を勧められた。

ホルモン治療をしていく過程で子宮内膜が厚くなりやすく、自分はそれで手術を受けた経験があるので、子宮体がんの検査も含め、婦人科受診は必要だと思う、というアドバイスだった。


腰が重くなりがちな婦人科受診だが、行ってみようか。


体験者のアドバイスは、ズドンと自分の気持ちに入ってきた。

そうだった。

大学病院では、一つの科で一つの治療が専門に行われて、一つの科で個人の全身をトータルで診てはくれない。

だから、面倒だが、不安があれば、自分で他の個人病院を探して、各科をそれぞれ受診しなければならないのだ。

そこには、きちんと手間を掛けなくてはいけないのだと、改めて、気づかせてもらった。


最後、印象に残ったのは、趣味を極めて、積極的にその活動の幅を広げている人の話だった。

自分自身に停滞感を感じていた頃だったので、その人の行動力がとても眩しく素敵に映った。

その活動について、思わず「病気をしてから、始められたんですか?」と訊ねると、「病気をしたから、始めました」と、力強い答えが返ってきた。

「自分が活動する場所は、自分で作る!」と笑顔で言っていた。


凄いバイタリティーだ。

病人として臥せっているつもりなんて、ゼロ!!


生き生きと、「そうなりたい自分」に近づくために行動している人は、「そうではない自分」や「そうできない自分」、「上手くいかないことばかりの自分」を知っている。

今この時点でも、「輝く自分」と「そうではない自分」が混在しているはずだ。

それでもまた、理想を描き、目標を置く。

危機を好機に変えるために。


そんな風に、その人は見えた。


たくさんの発見があった。


患者会に参加して、良かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る