第42話

皮下脂肪に注射で打つホルモン剤リュープリンを終了して1年7ヶ月ほど経ったころ、不正出血があった。

それは1日だけのことだったが、数日前から、体が浮腫んで調子の悪い日が続いていたので、気になる。


不正出血から4日後、生理になった。

子宮筋腫のせいもあってか、以前より出血の量がかなり多い。

筋腫が大きかったり、数が多かったりすると、出血の量が増えるらしいのだ。


リュープリンを投与して生理を止めている間は、子宮筋腫が大きくならないという嬉しい副作用があるのだと、健康診断の婦人科検診で、医師から教えてもらっていた。


しかし、今、服用しているのはタモキシフェンだけなので、筋腫もまた育っているのだろう。

これまで経験したことのない大量出血に、驚いてしまった。


それにしても、生理があるのに、ホットフラッシュなどの更年期症状も無くならずにある、といことが腹ただしい。


どっちかひとつにならんのか。

これじゃぁ、二重苦だ。


初めに医師から、これからの治療方針の説明を受けたときは、5年再発がなければ寛解、治療終了というのが標準治療だった。

しかし、その数年後に、乳がんの標準治療の期間は10年に変わっていた。

つまり、あと5年、タモキシフェンを服用するのだ。

あと5年、更年期症状に苦しむ日々が、まだ続く。


なのに、大量出血。

残念だ。


医師からは、がんの顔つきが悪くはないから、治療を5年で終了してもいいという提案があった。

5年と10年の治療の予後の差、つまり生存確率。

数パーセントでも、生存確率を上げたい気持ちで、10年治療を選んだ。


間違いだっただろうか。


病院で、ぼんやりと診察の順番を待っていると、元患者が主催する患者会のチラシが目に入った。


なんとなく、毎日に停滞感を感じていたので、何か、これからのヒントが落ちていないかと、参加してみることにした。

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