第37話
自分の場合、ホルモン剤治療の副作用は、強く出ている。
副作用イコール、更年期障害の症状と言っていい。
周囲の人は、更年期障害の辛さを、どれだけ理解しているだろう。
「年配女性のイライラの原因」とか、「急に汗が吹き出して、大変そうだね」くらいだろうか。
命の危険に晒されていないのだから、周囲の人が、この症状の辛さを深刻に感じていなくても、不思議はない。
しかし、自分の場合、この更年期障害の症状のひとつ、ホットフラッシュが起こっている最中は、体が暑くなり、汗が吹き出して、動悸が激しくなるのと同時に、大きな焦燥感にも襲われていた。
「自分は今まで何をしてきたのだろう?今この状況、これでいいの?間違っているのかも!!どうしよう!!どうしよう!!」という、焦燥感だ。
猛烈な自己嫌悪とでもいおうか・・・。
この焦燥感、自己嫌悪は、絶望にも似た感情だ。
ホットフラッシュが起きていないときには、まったく抱かない感情。
ホットフラッシュが起きると、全てが、どうにも苦しい。
でも、こんなに苦しいからこそ、この苦しみの「全て」を分析しなくてはならないと思った。
そして、必死にホットフラッシュの最中に向き合い、気づいたものが、「自分を責め続ける焦燥感」だった。
肉体だけの苦痛ではないということ。
この時だけ、精神にも、変調が起きている。
大きな気づきだった。
「こんなキツイことを、今、自分は耐えているのだ」と、自分をきちんと労って、評価してあげることができた。
だからこそ、男性である夫、幼い子どもが、副作用の苦しみを理解できるはずもないのだと、自分自身が承知していなくてはならないことなのだ。
だが、その結論とは裏腹に、気持ちがついていかない。
つい、家族にイライラとした態度をとることも、多くなった。
症状を理解していても、それが改善されたり、軽減されることはないのだ。
毎時間、何度も、苦しい。
不安睡眠障害も、確実にQOLを下げ続けた。
しかし、そうだからといって、じっと苦しみに耐えているだけの生活をしたくはない。
プールに行って、以前のように泳げることを確認して、安心した。
モスバーガーをテイクアウトして、広い公園でランチした。
家族でキャンプに行って、日の出を観ながらモーニングコーヒーを楽しんだ。
毎日、勉強をして、知識を蓄積した。
気がつけば、手術をしてから一年半が経っていた。
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