第25話
そういうわけで、年末に行った診察時に、ホルモン剤の注射を腹部に打った。
液体ではなく、短いスティック状の固形物だ。
腹部の脂肪の中で、薬剤がゆっくりと溶け出し作用するもので、飲み薬と並行して行うということだった。
効き目が安定してくるのは1〜2ヶ月後、その間、生理もまだあるかもしれないとのこと。
ふぅ〜ん、そうなんだ・・・。
取り敢えず、無事に、子どもと「お気に入りのお店」へ行き、ホルモン剤投与の初日のおおかたを乗り越えた。
あと少しだ。
今日のうちに、薬局で飲み薬を受け取ることにした。
薬局では、処方箋の飲み薬「ノルバデックス」のジェネリックをお願いした。
これから5年間、毎日服用するのだから、高額な先行品は避けたい。
しかし、薬剤師から渡された薬は、自分が予測していなかった、知らない名前の薬だった。
ネットで色々情報を得ている自分としては、タモキシフェンが処方されると思っていたので、動揺した。
聞きかじった知識しかない素人が余計な事を言うのは失礼かな・・・と思いつつ、薬剤師に聞いてみた。
「あの・・・、ジェネリックだと、タモキシフェンという薬もあると聞いているのですが・・・」
「はい、ありますよ。そちらにします?」
「値段は、違いますか?」
「はい、お待ちください」
そう言って提示されたタモキシフェンの金額は、今、目の前に出されている初耳の名前のジェネリックより、かなり低価格だった。
「すみません・・・、価格が安いのでタモキシフェンに変えてもらうことできますか・・・?」
と、すでに初耳ジェネリックの諸情報をPCにカタカタ打ち込んでいる薬剤師に、申し訳なさそうに言ってみた。
「あ、はい。わかりました」
薬剤師は、怖いくらいの無表情で、薬を変更する手続きを始めた。
カタカタカタ・・・。
なんだよ。
ぼったくりかよ。
種類があるなら、先に言え。
結局、ネットで得ていた俗世間的な情報に惑わされるどころか、自分は助けられたのだ。
ありがとう、ブロガー達。
翌日から、タモキシフェンを服用した。
それから一週間が経つ頃、猛烈な眠気に襲われるようになり、ついに体が急に熱くなる「ホットフラッシュ」が始まった。
さらに一週間が経つ頃には、不意の吐き気に悩まされることになった。
これが副作用、更年期障害なのか?
ホルモン剤の副作用は個人差があるということだったので、自分は軽い方であって欲しいという淡い願望があったが、あえなく潰えたのか?
このまま薬を服用している間はずっとしんどいのか、それとも今だけなのか?
他の人は、どうなんだろう。
ホルモン剤治療だけの人の「リアルなネット情報」がほどんど無いなか、残念ながら自分の症状はきつくなっていく。
これ以上、体調不良が日常生活に支障をきたして欲しくないという思いで、いっぱいだった。
でも、スケジュール通りに、来月末から放射線治療が始まる。
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