第22話

退院して、一週間ほど経った。


手術の痛みは、傷口よりリンパ節部分の腫れの方が強い。

痛みを逃すために、リンパ部分をさすってなだめる。

ずっと、痛み止めの薬と眠剤は欠かせない。


本来の手術予定日だと参加できなかったはずの、子どもの学校行事に参加した。


手術の日が決まった時に、その行事には入院していて行けないことを伝えると、子どもはとても残念がっていた。

いつもはグズグズ言わないタイプなので、珍しかった。

どうしても、実行委員として頑張る自分を見て欲しかったのだ。


しかし、ありがたいことに手術日が早まって、こうして痛みを堪えつつも、子どもの委員としての活躍を見ることができた。

なんてラッキーなんだ。

色々な人たちから頂いたチャンスと配慮に感謝だ。


一緒に参加していた夫が、見事じゃんけん列車で勝ち残り、ステージに登って歌を唄うことになった。

優勝者が罰ゲームを受けるような企画だ。

どおりで、子どもが事前に「じゃんけん列車で勝っちゃダメだよ」って言ってたわけだ。

夫は歌が大の苦手なのに〜、ぷぷぷ。


バタバタしながらも、一生懸命に、得意げに、自分の仕事をこなしている子どもが、愛おしかった。

頑張っている姿を見られて良かった。


行事が終わり、子どもと一緒に帰るため教室前の廊下で待っていると、帰りの会で子どもが表彰されていた。

「テストで100点取った時と、人の為になるような良いことをした時に、先生からシールをもらえるよ!そのシールを日本地図の台紙に貼って、日本一周コンプリートしよう!」という取り組みの、コンプリート一番乗りだったのだ。


先生は、「テストの100点だけでは、こんなに早くコンプリートはできません。なんといっても、人の役に立つことを沢山していたから、一番乗りになったんですよ。そこが素晴らしいのです」と、生徒たちに説明していた。


そうだったんだ、知らなかった。

先生、お褒めの言葉をありがとうございます。

やっぱり、今日来られて良かったな。


廊下に出てきた先生は、「今日は実行委員で頑張ったし、お父さんがじゃんけん列車で優勝するし、日本一周コンプリートも一番乗りだったので、〇〇ちゃんデーですね〜♪」と、にこやかに今日一日を形容してくれた。


本当に、そうだ。

なんて、嬉しい日だったんだろう!


リンパが痛くて、痛くて、痛くてしょうがないけど、

この日を見逃さずに済んで、本当に良かった。

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