第4話

やっと、乳がん専門医からの紹介状を持って、手術を受けるための大学病院へ行く。

予約時間は、午前8時30分だ。


午前中、またも、耐えかねる痛みのマンモグラフィーとエコー検査を受けた。

念には念を入れるためなのだろうと、無理やり自分を納得させる。


その後は、いろいろな書類を渡され、記入する。

様々な同意書や、がんの告知は受けたいか・受けたくないか等、決めなくてはいけないことが多いと知った。


その後、診察の予定があるが、いつまで経っても呼ばれない。

メカニカルな呼び出し機の音を聞き逃したのか、不安になる。


午後2時過ぎに受付で確認すると、「順番にお呼びしておりますのでお待ちください」と、お決まりのフレーズを、当たり前にいただく。


午後5時過ぎになると不安もMAX。

診療終了の音楽が流れ始め、自分が何か大きなミスをしていたのではないかと、自分が呼ばれないままでいる理由を脳内で探しまくった。


「順番にお呼びしております」と再度言われることに抵抗を感じ、受付でもう一度確認するかどうか、ムダに悩み始める。


そして、ついに、呼び出し機が鳴った。


診察した医師は、「急なオペが入ったので遅れました、申し訳ありません」とお詫びの言葉を述べてくれた。


「この待ち時間なら、余裕でハワイに行けていたよ。病院が終わるまで、朝一からずっと待つってなんやねん!こっちは、がん患者なんだぜ!」という怒りは消え、緊急でオペを受けることのできた患者の無事に、思いを馳せた。


忙しそうな医師から、午前中に記入した書類の、「がんの場合は、宣告は本人に直接する」という選択通り、がん宣告を受ける。


多くの人が必要になりますよと、気を遣って入眠剤を勧めらるが、乳がん専門病院ですでに宣告を受け、気持ちが少し落ち着いてきていたところだったので、断った。


その判断に関しては、後で大いに後悔した。

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