第3話
予約をした乳がん専門病院へ、検診時のマンモグラフィー画像を持参して行った。
その画像と触診等を行なって、再診断をしてもらう勝手なイメージを持っていたが、実際には、数週間前にも行なったあの激痛を伴うマンモグラフィーをもう一度、そして、新たにエコーと針生検を受けた。
触診をしているときに、医師の顔が曇る。嫌な予感がはしる。
子どもの年齢を聞かれたので返答すると、医師は「9歳か・・・」と2回呟いたあと、無言になった。
終始、優しく語りかけてくれていた医師が言葉を続けられなくなった様子から、検査結果は期待できないと、覚悟をした。
一週間後、検査結果を聞きに行った。
覚悟通りだった。
慎重に低いトーンで告知した医師が、こちらのあっさり受け止める態度を見て、安堵しているのがよく分かった。
検診と専門病院のマンモグラフィーでは、しこりがほとんど映っていなかったが、エコーでははっきり映っていたこと、検診の触診で見つけてもらったことはとても幸運だったことを説明してくれた。
自分がいつも受けている検診場所は、「マンモ+触診」か「エコー+触診」のどちらかを選んで受けるシステムだった。
そして、精度がいいと思い込み、「マンモ+触診」を受け続けていた。
しかし、今回の説明によると、乳房の密度が高い人は、マンモグラフィーでしこりが映りづらい、その場合はエコーの方がいいということだった。
毎回マンモグラフィーで乳房を押しつぶされることに激痛を覚える自分は、その密度の高いタイプの人だった。
手術はこの専門病院では行なっていないので、手術のための病院をどこにするのかという話に移った。
乳房再建に積極的なところで手術を受けたいという、検査後一週間考えていた思いを伝えた。
医師は、告知の低いトーンから一転した明るさで、いくつかの病院の特徴や手術の評判を提示してくれた。
そして、その場で病院を選び、紹介状を書いてもらうことにした。
泣かずに話をトントン進められた自分のドライさに、自分自身で驚く。
医師の心の負担を少なからず軽くしてあげられて、良かったとも思っていた。
夫には、ダメだったよ、と伝えた。
根拠のない「きっと大丈夫だよ」を連呼していた、優しい人。
ありがとう。
でも、この数週間、自分はその言葉で安心することはなかった。
すがることもなかった。
最悪を何度もイメージした。
現実を正しく受け止められる気持ちを維持するだけで、精一杯だった。
それが、自分にとって正しいやり方だった。
次に、手術を受けるための病院へ初診で行く日は、9日後だ。
検診でがんの疑いがでてから、1ヶ月以上が経っている。
この間に、検査はしてきたが、何の治療もしていない。
それが、一番の恐怖になっていた。
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