第3話 青銅②
「何してるの…?」僕は恐る恐る聞いた。そして、彼女は青く光る眼で僕を見つめながら、「こうやって、抱きしめたら、眠れるかなって。もしかして、物足りない?」と言って、舌なめずりしながら、「じゃああ。」と言った。
彼女は僕の大事な昔からのパジャマにその細くてしなやかな手を掛けた。ボタン式でないラグランのシャツにするりと彼女の両手が通り抜け、仮面ライダーの顔面を二分するように破いて見せた。「ビリビリビリ!」と音がして、僕は「うわああああ」と言った。
彼女の手が、僕の胸に触れ、ひんやりとした感触が伝わってくる。彼女は、そのまま上体を僕の方に再び預け、「めちゃくちゃにしてあげる。」と耳元でささやいた。
彼女の身体から電気が走り、僕の股間がパジャマの下のブリーフの中で漲ってくるのを感じた。顔を僕の耳元から離して、不敵な笑みを浮かべている彼女に、先ほどまでの控えめでおとなしい優しい彼女の面影はなかった。
僕は、彼女が何者かに憑りつかれたと直感し、先ほど自宅で見たレースの悪魔を思い出した。雷のストロボの光に照らされて見えた彼女は、レースみたいな服を着ていた。そこから僕は、間違いないと判断した。僕は、(逃げないと!)と思った。
しかし、僕の身体は痺れたように動かなかった。彼女が発している電気のせいか、僕は身動きが取れなくなっていた。そんな中彼女は言った。「私、もう、私じゃないの。女が女であるための理性を捨てて、獣みたいな生き物になってしまったの。」と。彼女の眼は、黒目勝ちになっていた。青い炎は消えていたが、もう、理性はどこかに消えて、なけなしの彼女らしさが僕に訴えているようだった。
「ごめんなさい。」と彼女は言って、また瞳に青みがかかった。その瞬間、猛烈な閃光が僕の腹の上で爆発し、僕の下衣がすべて吹き飛んだ。そして、猛烈な快感に襲われ、陰茎からは見たこともないほどの大量の精子がグレネード弾のように暴発した。
「あああああああああ」僕は、狂ったように叫びながら、自分の口元を押さえた。絶対にこの家の人たちに聞かれてはならない、ものすごく破廉恥で情けない声だった。
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僕は、ぐったりしながら身体を起こした。気が付けば、僕の上には、彼女も、彼女に憑りついた魔物も、いなくなっていた。僕は、汚してしまった彼女のマットレスを、僕の吹き飛んで散り散りになった服だったものたちで拭いて、部屋を後にした。
僕は、裸で外に出るわけにはいかないと思い、お父さんのであろう衣服を箪笥から拝借し、逃げるように彼女の家から飛び出した。ビニール袋を借りて、ザーメンまみれになった仮面ライダーを、袋に詰めたものを手に持って。
僕は、走った。泣きながら、走った。
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