第41話 勘違いと言うか言い間違いと言うか
町並みはミムノアより田舎、そりゃそうか。王都っていうのは実際真ん中らへんにありそうだよな。
そう思うと、何故ミムノアはあんな魔大陸に近いところに城が構えてあるのか、少し疑問に思う。
先人の知恵はようわからん。
今は朝ということもあり、人の数がそこまで見受けられない。
走っている人がいたり、剣の素振りをしていたり、水汲みをしていたり、お店の準備をしているところがちらほらあるくらいだ。
「もう出店構えてあるじゃん」
「本当だな、よってみるか」
今思えば24時間営業って神だったんだな。いついかなる時でも商品があるってのはありがたいことだ。
出店と言っても宝石やらネックレスやら指輪やら、女受けのよさそうな品ばかりだった。
「一つ、買ってくかい?」
お婆さんそういった。値段も一緒に書いてあるのだが、一番安いので大銀貨4枚だ。平均して高い。
何かに仕えるものであれば、出し惜しみせずにお金を出していたんだが見た感じ、自分を飾るための道具にしか見えない。
すると隣から肩をちょんちょんと指で軽く突かれた。
「あん?」
「鑑定してみたんだけどよ、あの一番高いやつ、触れた相手に変身できるスキル【人擬態】が付与されてるぞ!買わね?」
確かにそれは便利そうだ。たぶんだが、黒髪黒目ってことであのアリラドの暗部に見つかるし、ミムノアの王女様に見つかったんだろうと思う。
もしこれがあればアリラドの魔の手から逃れられるし、女に変身すればあんなことやこんなことまで?!よし、買おう。
「お婆さん、これ二つある?」
と言って人擬態のスキルが付与されている指輪を持った。
「丁度二つあるわ、けど、その……」
少しお婆さんが口ごもる。人擬態のスキルが付与されている指輪に少し心残りでもあるのだろうか。
確かに金貨10枚は高額過ぎて一緒にいる時間が長かったのだろう。きっと思い出があるのだ。
「そのね、この指輪に描かれている花はね、イロと言ってね「来世もあなたと」っていう花言葉なの、その、それでも買う?」
お婆さんが慌てふためきながらこの指輪について教えてくれた。
別にその程度のことは気にしないだろう、ってかこのお婆さん結構ピュアと言うかなんというか、可愛らしい心の持ち主だ。
ふとセイヤの方を見ると、顔をゆでだこのように真っ赤にしていた。
なんだよこいつもキュートなハートを持ってるのかよ。めんどくせぇな。
「大丈夫ですよ、二つお願いします」
俺がそう言うとお婆さんが何かを察したようなきりっとした顔をして見せた。えなんで?そしてセイヤを見ると胸の前で左手の人差し指の先端とと右手の人差し指の先端をチョンチョンしていた。
は?しかもセイヤの顔をよく見るとなんだか女の顔をしている気がする。実際見たことないけど。
え?もしかして何かを察したかのような顔をしたお婆さん、なにか勘違いしてないか?ちょっとまて思い出せ今までの会話を!
お婆さんがこの指輪の柄にあるイロの花の花言葉を教えて「本当にいいのかい?」と言って俺は「大丈夫ですよ」って答えた。
……客観的に見たら、もしかしてセイヤと俺が付き合ってるって感じに見えないか?!
後ろを向いた。
すると、なんだか納得したような、多様性だよな的なことを言いたそうな顔をしている。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。おかしいだろ?!セイヤ否定しろよ!何メスの顔してんだよ!なんか変な勘違いされたじゃないか!!!!!俺にその気はない!!!!!!!!
いや別にその在り方について否定しているわけではない。そのことに関して堂々と言えるようになればいいなとすら考えている。でも!俺は異性が好きだ!
「ほれ、二つ分用意したよ」
と言って花束も一緒に渡してきた。いやいやいや。プロポーズするか。セイヤも左薬指ださなくていい!あーもう!セイヤの悪ふざけから全て始まったよクソが!
すると一人の眼鏡をかけた女性がいただきますのようなポーズをしながらこちらに近づいてきた。
「いいものを見せていただきました。ごちそうさまです。本当に神様は居るんだなって知ることができました本当にごちそうさまです」
あー、終わった。
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