第38話 異世界の忍者

「あの、えっとその……私の体!どうぞ?」


ばっと腕を広げた。きっとはじめてなのだろう。まぁ俺もなのだが。


 しかしなぜ来た?こんなことウィフィスさんはあまりしなさそうなイメージだったのだが。


 ……一周周って冷静になったが、俺は男子高校生、以前の俺では絶対に訪れなかった喜びが目の前にあるのだ。うん、素直にいこう。


 俺はウィフィスさんを押し倒した。ベッドの上で二つの胴体が平行になる。


 キスをしようと唇を近づけ寸のところだった。


「トモヤ!」


 大声で叫ぶセイヤ、なんだよ今いいところなのに。


 ウィフィスさんがどこから取り出したのか短剣を俺めがけて真っ直ぐに刺そうとしてくる。


 もちろんこの程度のスピードなら避けるのはたやすい、そして反撃もたやすい。


 迫りくるナイフが俺に到着する前に両手首を折った。


「ァアッ」


 普通なら大声を上げて泣き出すと思うのだが、少しもだえる程度か。痛みに慣れているのか?


 しかし残念だ。ウィフィスさんとはいい関係を気づけそうだったのに。


「どうしたんだセイヤ」


「実はさっき俺暗殺されかけてさ」


「俺の方にも来てないか心配したのか?」


「まぁそんなところよ、ほら」


 男が縄で縛られ白目をむいていた。水魔法で窒息でもされたか。


 ウィフィスさんはどうしたものか。と思ったら、ウィフィスさんじゃない。誰だこの女。


「とりま足首折って逃げれなくするわ」


 俺の言葉にそいつははっとして逃げようとしたがあんまり早くはない。ボキッ、的確に折れたと思う。


 手足首折れても逃げたら嫌なのでとりあえず縄で縛った、短剣奪って。


「なぁこいつらどうする?」


「うーん情報吐き出させるか?」


「でもこいつら俺の【気配察知】すら発動せずに殺気をころしてたんだぞ?結構な暗殺者だと思う、だからたぶんだけど、依頼人とかの情報吐くより死んだほうがましとか考えてそう」


「それもそうだな、じゃあどうするよ」


「ちょっと耳かせよ」


「あん?」


「鑑定とかで見れないの?」


 男の方は気絶してるからともかく、女の方は聞き耳を立ててそうだ。まぁ別聞かれてても鑑定すればわかるしな。


「それもそうだな【鑑定】」


「どうよ?」


「あぁ、なるほど。こいつらあのアリラド国の暗部だってさ」


 アリラドかぁ、え、いつの間に生きてるのバレてたんだ?異世界の忍者も恐ろしいな。


「しかもかなり強い、そしてこいつら奴隷だな」


「奴隷?やっぱこの世界奴隷制度あるのかよ」


 あぶねー。追放された時奴隷にならなくてよかった、もし奴隷にでもなっていたら、きっと自殺を考えていただろう。


「でもわかったところでどうするんよこいつら」


 アリラドの暗部どうするか問題について話し合っていると背後から明らかな殺気を察知した。後ろを振り向くと投擲の体勢を取っている女が一人。


「まだいたのかよ」


「【眠りの魔眼】」


このスキルは対人戦において非常に助かるスキルだ。まだスキルレベル5の時、あのファトムさんが寝かけそうだったのを覚えている。


 女が一人眠り、落ちたのを見届けてから縄で縛った。


「サンキュートモヤ、まさか三人もいるとは思わなかったよ」


「俺も殺気がなかったらわかなんかったわ」


 手足首を折った女が目を大きくかっぴらいた。助けてくれる仲間が急に眠ってしまったら驚きもするだろう。


「なぁトモヤ、こいつら洗脳状態だわ」


「?どういうことだ」


「指輪してるだろ、その指輪を鑑定してみたら痛覚耐性と……洗脳の効果があるんだよ、しかも魔族の」


「奴隷を洗脳して忠実なる下部を作ったてわけか、魔族の手を借りて」


「魔王を倒してほしいとかほざいていたあの王様がね」


 それもそうだな、なぜわざわざ異世界から魔王を倒してほしいがために勇者を召喚したんだ?魔族と協力体制にありそうなんだが。


 とりあえず指輪外してみた。


「いたぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあい!!!!!!!!!」


 指輪を外した途端大声を上げた。うるさかったので【回復魔法】をしてあげた。まだ痛そうだったがはぁはぁと息を上げるだけだった。


 大勢の足音が聞こえる。

 

「どうされましたか?!」


 きっと彼らから見た俺らは誘拐犯に見えただろう。なんてタイミングが悪い。

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