第37話 裏

三日前


〈アリラド王視点〉

コンコン

「失礼します」


「リスヤーマか、どうした」


「陛下、先ほど暗部から伝言が届きましたので、ご拝見を」


「うむ、ご苦労」


シュールズは手紙の内容を読み、驚きの表情を浮かべる。


「なぜ生きている?」


 暗部からの手紙の内容は魔大陸に追放したはずのセイヤとトモヤが生きていることが書いてあった。


「勇者はあやつらとの別れを悲しんでおったからの、面白くない。リスヤーマよ、貴様はどう思う?」


「あそこから生還することに疑問を覚えますが、所詮は不能職業に不能スキル、暗部に殺せと命じるのが良いかと」


「そうじゃな、じゃが自力で魔大陸から生還したのであれば正面からの攻撃は難しい、あやつらが隙を見せた瞬間に暗殺せよと伝えるのがよかろう」


「さすがは陛下、それではお伝えしてまいります」


「うむ、頼んだぞ」



〈ヘス視点〉


 私はアリラド国暗部に所属しているヘスだ。アリラドは表面上は活気がある国だが、光りあるところに影ありと言うことでもちろん黒い部分もある。


 なぜアリラドが五大国家の中で随一の国を誇るのか、それは自分たちの都合が悪い情報をもみ消したり、相手国の戦力や大きくなる可能性を潰したりと暗部の活躍にある。


 暗部にはどこを担当するのか決まっておりはミムノア近辺の情報収集などを行っている。


 言うて仕事はそこの国の異変を【手紙】というスキルで報告することがほとんどで暇なことが多い。


 因みに【手紙】というスキルは相手に伝えたいことを文章で送るもので、相手が【手紙】スキルを持っていた場合は返信がもらえる。現在私のスキルレベルは7なので、距離的にミムノアからアリラドへは二日でつくだろう。そして暗部のを仕切るリスヤーマ様はスキルレベル10なので12時間でつく。


 今日もミムノアを調べていたところ森から凄まじい気配が一瞬したので見に行くことにした。


 そこには珍しい黒髪黒目の青年二人がいた。


 確かあれは……あ!異世界から来た人間で使えないとか言われて魔大陸に追放させられた奴らだ!


 今すぐにこのことを報告しなければ。どうやってきたのかは知らないが先ほどの気配からしてかなりの実力なことがうかがえる。


 処遇についてはたぶん暗殺だろう。【手紙】のスキルで伝えたいことを送り一旦拠点へ戻った。


 もちろん暗部は一人ではない。各国に5人配属される。そんな少なくて大丈夫かと言われたら大丈夫だと言える。


 私たち国の調査を任された暗部は冒険者で言うAランク相当の実力を持ち、忠実な下部なのだ。仮に相手に情報を吐けと拷問されたとしても口は開かないし、耐えられなくなったら舌をかみ切る。絶対に情報を吐かない。それが奴隷だけで構成された暗部なのだから。


 この情報と自分の考えを他の四人に共有した。


 話し合った結果をまとめると、私とクデクは一人ずつ暗殺し、もう一人のヨサは見張ることになった。他の二人はこれまで通りミムノアの視察だ。


 早速暗殺の準備を始めた。実力差は結構あると思うが、私には必殺の短剣がある為、短剣さえかすめることができれば暗殺成功だ。

 

 投げるのもありだが、相手がよけたり短剣を捕まえたりした場合は終わりだ。


 ここは私のスキルが役に立ちそうである。



二日後



 正式に暗殺をせよとの命を受けた。ヨサの情報によるとレベル800越えの魔大陸から渡ってきたモンスターを倒したと言う。これは気を引き締めなければいけない。


 そしてヨサの情報によると、今日ミムノア城に泊まるとのこと。これはラッキーだ。高確率で食事をミムノア城で行う可能性があり、ミムノア王は大の酒好きときた。


 きっと二人も酒を口にするだろう。人は酔うと正常な判断ができなくなるため、そこをついて殺そう。と意気込んだ。


 途中から三人で見張りをはじめた。少し曲がっている変な剣を持っている方(名前はわからん)が、見られていることに気付いたのかきょろきょろとしだしたのは驚いた。三人とも【隠密】のスキルレベルは5以上はあるのだが。


 食事が始まり、ちゃんと酒を飲んでいるの確認する。途中ミムノア王が「娘がはやらん!」とか言ってたので顔が緩みそうになった。……少し羨ましい。


 今から格上を暗殺するので、自分の心からまず殺さなければならない。


 部屋に戻ろうと足を進めているのが見えた、私は変な剣を持っている方を殺す。いよいよだ。

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