第36話 ばんごはん
今は日が沈みかけており、あと一時間はすれば夜が空を支配するだろう。
俺達は宿に荷物を取りに来ていた。
たった一日王城に泊まるだけなのだが、ここは異世界、日本とは違ってセキュリティはがばがばで、荷物を狙って部屋に侵入されても誰がやったのかわからない。
とはいってもそんな大層な荷物はない、少しの服があるだけだ。
服をセイヤのアイテムボックスにしまい、宿主に一言告げてから王城へ向かった。
向かう途中、誰かに見られている、そんな気がしたが、きっと気のせいだろう。
王城につくと、「こちらへ」と案内され、大きな扉が開かれた。
そこには大きな机の上に豪華な料理、目がうまいと訴えている。きっと日本だと五つ星レベルだろう。実際見たことはないが。
「おう、きたか」
王様、随分とラフな格好で。今まで頭の中にあった王の先入観が一気に崩れていく音がした。
しかし多いなぁ。王様に女王様に妾だと思われる女性が二人、そして六人の王子様?に五人の王女様、子供だけで十一人を超える。
た、大変だっただろうに。王様も、女王様も。
「こちらへ」
用意された席に俺とセイヤが座る。緊張が固まってしまうがセイヤも同じようだ。
王様が銀のグラスを手に大きく上げた、きっと乾杯なのだろう。女王様やその子供たちもグラスを持つ。俺達も遠慮がちにグラスを持つ。
「ウィフィスを救ってくださったセイヤ殿とトモヤ殿の感謝を込めて、乾杯!」
『乾杯!』
グラスの中身を口に運ぶ。苦い!これ多分酒だ。しかもワイン。
「に、苦いな」
「そうなのか?」
セイヤはまだ飲んでいないようで、俺の感想を聞いてからワインを飲む。
「確かに苦い」
やはり酒初心者の俺達がいきなりワインとはレベルが高いような、そんな気がする。
「セイヤ殿とトモヤ殿はメルンは初めてか?」
王様に問われた。どうやらこの世界ではワインのことをメルンと呼ぶそうだ。
「え、えぇ、この味に慣れるには時間がかかりそうです」
「少し珍しいな、大体が十五になったとき、酒を飲むんだがな」
なるほど、この国で酒が飲める年齢は十五なのか、じゃあ成人は十五と考えてもいいのだろうか。
「そうですね、もしかしてトモヤ様とセイヤ様はまだ十五を迎えておられないのでしょうか」
ウィフィスさんもメルンを嗜んでいるようだ。見た目的には同い年ぐらいか、なんか酒を飲む姿に少々違和感がある。
「いえ、俺たち二人とも十五です」
まぁこんな感じで夜は更けていった。
途中王様が「娘はやらん!!!!」と酒に溺れ、ザ父親みたいなセリフを吐いていた。
かくいう俺も結構酔っているが、なんとか自我を保てている。セイヤに関してはべろべろっで俺が肩を担いでいる。
部屋は違うため、セイヤの部屋に入りでっかいベッドをセイヤを投げて俺の部屋に戻った。
そういえばセイヤに洗浄かけてもらってない。まぁ今日ぐらいはいっか。
ベッドに身を任せ、瞼を閉じる。酒はあるのだがすぐに寝ることができなかった。
あと少し、あと少しのところで、扉が開く。
「トモヤ様は起きてるでしょうか」
この声は、ウィフィスさんか?少し体が怠いが、体を起こす。
扉の近くにいるであろうウィフィスを見ると、カッと目が開いた。その姿は寝間着にしては薄い薄すぎる。なんていえばいいのか。キャミソールにスカートができたような姿。
薄くて少し透けてる。あ!なんかピンクのやつ見える!!二つ!
喉が鳴る。これはきっと夜這いと呼ばれるやつではなかろうか。ウィフィスさんの顔を見ると、少し頬を赤らめ、こちらと目が合わない。体もたじたじとしており、まさに確定演出だった。
「ど、どうしましたか?」
俺が声をだすとウィフィスさんの体がビクッとなっていた。そして足を進め俺の横に座る。
「あの、えっとその……私の体!どうぞ?」
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