第35話 便利だけど……

 何か一つ望むものと言っても、中々思い浮かばない。お金は白金貨10枚で十分すぎるのに更に100枚もプラスされるのだ。この旅の道中でお金に困ることはないだろう。


 で、お金ではないとなると旅に必要な道具とかか?うーん……ないな。


 ここは一旦セイヤに相談、と言っても勝手に発言していいのだろうか。王様の目の前、もし勝手に喋ることによって首が一つ二つと飛んでいくかもしれない。


 あぁ、どうする?相談の許可を申し出るか?でもその言葉が失礼だ!って言われたら終わりだぁ。


「あの、王様、少しトモヤと話してもいいですか?」


「あぁ、よいぞ」


 神よ!!救いの手を差し伸べていただき感謝します!まじセイヤ様様だな。


「なんだよその顔、気持ち悪いぞ」


 おっといけない。感謝の念が顔に出ていたか。失敬失敬。


「いやいやなんでもない。それでどうする?」


「うーん、王様に委ねてみる?」


 どう言うことだろう。委ねるって何をだ?王様に「俺達に上げたいものあります?」とか聞くのだろうか。


「何をだよ」


「例えばほら、俺達ってこの世界を回ることが目的だろ?それであったらより快適に旅を過ごせるものとか、王様のこの二人は安全ですよって証明する何かをもらうと行動の範囲が広がるとかさ!それを聞いてみるんだよ」


 なるほど、でもそれって王様に聞いても意味あるのか?なんなら冒険者ギルドの受付とかギルドマスターに聞くのが手っ取り早くないか?


「ちょっとよいか?」


「なんでしょう?」


「会話を盗み聞きするようで悪いが、先ほどから旅に役立つものと言う単語が出ておるのでな、我が国が誇る魔道具がお主らの旅に役立つかもしれぬ。おい」


 使用人らしき人が魔道具を取りに出ていった。

 

 なるほど魔道具か、しかし魔道具と言っても火をおこすような魔道具や、マジックアイテムではセイヤの魔法で事足りている。果たして何が出てくるのだろうか。


 因みに返事はセイヤだ。


「こちらになります」


 見た目はただの箱で掴めるぐらいの大きさだ。段ボールのような色合いで軽い。なんだこれは?


「こちらの魔道具はどこでもホームと言って、魔力を流すことによって発動します」


 なんか青い狸が持ってそうな名前である。多分名前の通り魔力を流すと家を作り出すのだろうか。


「魔力を流すと、この箱が大きくなり真四角の家が建ちます。中にはベッドやトイレ机などがありますが中を見るのが早いかと思われます。またこの魔道具を縮小化するには外に出てから箱に魔道具を流し込めばこのサイズに戻ります」


 おぉ便利だ。自由にカスタマイズできるのか後で実験したい。もしできるのなら旅が一段と豊かになりそうである。


「ちなみにですが、この中に生物を入れたまま縮小化すると、手のひらより大きい魔物は圧死して中が血まみれになりますのでご注意ください」


 さらっとえぐいこと言ったな。もしこれ外から魔力流されたら終わりじゃね。好奇心旺盛な人がこの箱に触れて魔力流してしまったら、俺達死ぬくね。


「あ、安心してください。中で設定することができ、透明化することができますので」


 ホッ、ちょっとだけ安心できた。


 しかしこの魔道具、すごいな。いろいろと怖いところはあるが、透明にできるのなら安心しても良いだろう。


 セイヤにこれでいいかとアイコンタクトを送る。ウインクで返されたのでOKということだろう。


「これにします」


「そうか、気に入ってくれたのならなによりだ。二度目となるが、娘を救っていただき誠に感謝する、今日はこの城に部屋を用意した。止まっていくとよい」


「では、お言葉に甘えて」


 え?セイヤ?いいの?なんか怖いんだけど。もしかしたら、この気持ちのいい笑顔の裏に暗殺とか考えてたら恐ろしいんだけど。ちょっと俺、王様恐怖症かな?


 まぁこれが杞憂に終わってくれたらいいのだが。

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