第34話 緊張すること

「トモヤ殿とセイヤ殿でしょうか?」


「は、ハイ」


「この度は第三王女、ウィフィス様をお救い頂き誠にありがとうございます」


「い、いえいえ、当然のことをしたまでです」


 あの女王様にバレ、どうやって逃げようにも逃げられずに今、現場にいた近衛騎士ヒョーデルさんとデハテスさんと共に馬車に揺られている。


 もちろん目的地はあの王女がいる王城、はぁいきたくない。なぜ俺がここまで行きたくないのかと言うと、王様に対する言葉遣いを気にしているのだ。


 王様に無礼を働かないか、心配で心配でできれば話したくない。じゃあなんで召喚されたところ、アリラドの王様のところにいたときはそれほど心配していなかったのかと言うと、突然の起きたことに脳の整理ができていなかったのと、木坂さんがほとんど気になっていたことを喋ってくれたからだ。


 本当にありがとう、そして次は俺の番のようだ。


「いつから冒険者業を?」


「今日で三日目ですね」


 セイヤが答えてくれた。あ、そうだ!返事とかは全部セイヤに任せればいいんだ!こいつは確かコミュニケーション能力が高かった気がする。


 まだ野球やっていたころ、セイヤも一緒にやっていたのだが、保護者の人から、お菓子を貰っていたり、たまに保護者の会話を聞いてみるとセイヤの話ばっかりだった。


 たぶんだがコイツは年上との会話も苦にならないはず。任せるしかないな。


「え?!あのウルフ集団を冒険者初日で?!そして聞いた情報によるとゴブリンの殲滅、ファイアーリザードの討伐、なによりおよそレベル800越えのブラックユニコーンの討伐をこの三日間で?!」


「えぇ、冒険者を始まる前に鍛えてもらいましたから」


「き、鍛えるって、えっと相当大変な修行だったのでしょう、お疲れ様です」


「いえいえ、魔法を5時間ぐらいぶっ放したりスキルの強化や使う幅を増やしたり料理だったりと、そこまで大変ではありませんでしたよ。トモヤは刀の修行だったのでわかりませんけど」


 結構話してんなセイヤ、このままじゃセイヤに王様の相手をお願いするとは言えない。まぁ最悪、ついてから話すか。


 俺も話に加わり、結構盛り上がったところで馬車がとまる。


「つきました。それでは案内いたしますので、ついてきてください」


 とうとうついてしまった。さぁていつのタイミングで言おうか。


「しかし、セイヤ殿発案のしりとりとは中々面白いゲームですね、イロの花」


「そうでしょう?暇つぶしにもってこいのゲームなんですよ!ナイトメア」


 え?馬車の話の続きするの?しかもしりとりにはまるとは、子供か!イロの花ってなんだよ気になるんですけど。


 セイヤもしりとり楽しんでるし、しかも現代に居ないけどこの世界でありそうな単語で頑張ってるし。あいつスゲーな。


「すみませんが、荷物を預からせていただきます。王に何かあっては困りますので。アイアンアームアトム」


「は、はいわかりました」


 荷物を預け大きな扉が開く。そこにはアリラドの似ている空間が広がっており、違うところを言うならば、目的とメンツくらいだろう。


 王様の近く助けた王女様がいた、てか隣にいる人本当に王様か?


 見た目はアリラドの王よりも若そうだが、40から50は年を食っているだろう。もしかして、王位を継承してからそこまで時間は立っていないのかもしれない。


 だが、酒場にいる気のいいおっちゃんみたいな風貌をしている。


「よく来てくれた、私はミムノア・デレステラ、この国の王をやっているものだ。この度は娘、ウィフィスを救っていただいたこと本当に感謝する。ありがとう」


「ありがとうございます」


 王女と王様が深々と頭を下げてくれた。この時点でかなり信用できる人なのかもしれないと思ったが、アリラドの件があるため、あまり人を信用せず疑うように心がけているつもりだ。


「そこでお礼として白金貨100枚に何か一つ望むものをやろう」


 さてここで王様と会話ピンチ。ずっとしりとりしているせいでセイヤには伝えることができなかった。


 いたるところから汗がだらだらで今すぐにでもシャワーに浴びたいくらいだ。


 シャワーないんだこの世界。

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