第31話 格好いいところ
カッコつけて猪線でファイアーリザードをぶった切った俺。アウェスさんの表情を見ると、白目をむいて口パッカーンしている。
ここまで驚かれると気分がいい。とりあえずアウェスさんを正常に戻して「次はお前だ」とセイヤに目配せする。
セイヤは俺のアイコンタクトを感じ取り笑みを浮かべて頷いた。
※セイヤ視点
随分とカッコいいことしやがって。確か猪線だっけか。しかし女性の前だけかっこつけやがって。あいつも男ってことだな。
トモヤが次はお前の番だと目で訴えてくる。アウェスさんの前だし、うん。かっこつけて、トモヤに惚れているかもしれないアウェスさんを奪ってやろう。これが俗にいうNTRってやつか?
まぁいい。俺が出すのは全国民が知っている伝説の必殺技。歌にもあるし、小さい頃はよく真似してたもんだ。この世界でも広めてやろう。
ファイアーリザード《トカゲ》には勿体ないかもな。
俺は構えた。丸い球を持つように手を上と下に空間を開ける。そこに魔力を込める。炎魔術の応用だ。原作だと水色なので、温度が水色になるように調節しながら魔力を込めた。そしてお馴染みのセリフ。
「くぁーーーーむぇーーーふぁーーーむぇーーー波ぁぁぁああああああああ」
※トモヤ視点
あいつ、やったな。かの有名な奥義でファイアーリザード二体同時に吹き飛ばした。しかしそれだけでは勢いが余り、ファイアーリザードの後ろにあった木々も土も削られていた。
さて、アウェスさんを見るとしよう。泡出てる。怖いよな。嫌だよな。逃げたいよな。認めたくないよな。でもな?これは現実なんだ。早く起きてもらわないとお金貰えないんだ。
「セイヤ!お前……やってくれたな!!」
「お前とあんま変わんねぇだろ」
「変わるて!!!あんな、知らん人が見たら気絶するだろ、ホレ!これ見ろ!」
アウェスさんをお姫様抱っこしながら腕を伸ばした。セイヤはハハハと乾いた笑い。考えなしめ。
とりあえずアウェスさんの名前を呼んで起きてもらった。
「す、すみません、取り乱してしまいました」
「いえいえ、こちらこそ驚かせてしまってすみません。えっと、これでゴブリンキングの討伐って証明されましたかね?」
「え、えぇ、十分すぎるほど見せていただきました。あと二体は消し炭になってしまいましたが、一匹の討伐証明部位の回収をした方がいいですよ、ファイアーリザードは尻尾です」
よかった。これでゴブリンとトカゲの討伐でお金いっぱいで懐がカイロ並にあったかくなる。
尻尾取って帰ろうと一歩を踏み出そうとした瞬間。気配察知が反応した。これは、殺気ムンムンだな。
「セイヤ」
「あぁいるな」
俺たち二人の言葉にアウェスさんは困惑している。端から見たらおかしいよな。俺達が顔を預けたほうにアウェスさんも向ける。
そこには肌が黒く塗られた一角獣が殺意むき出しに俺達と接敵した。
「気を付けろ、このブラックユニコーンのレベル800を超えてる」
なるほど、魔大陸から迷い込んだ馬ちゃんか。
「れ、レベル800……?た、倒せるわけありません……今すぐ逃げましょう!!」
「大丈夫」
「勝つから」
アウェスさんが俺達の心配をしてくれている、それはとても嬉しくてありがたいことだ。だがその良心をはねのけて、新たな心配を生んだのだ。ここは有言実行を果たさないと格好がつかない。
ちゃんと倒させてもらいます。
「イヒィーンブルルルルルル」
あちらも準備万端のようだな。俺は刀を構えて、セイヤは水球を作り出した。
「足引っ張んなよ?」
「ハッ!こっちのセリフだ」
大丈夫、今回もやれる。
ブラックユニコーンが走り出して、この戦いの狼煙が上がった。
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