第29話 お金

 俺達は今クエスト達成の確認と報酬を受け取るために冒険者ギルドに来ている。報酬を受け取らないと野宿することになってしまうのはごめんだ。


 とりあえずクエストである回復草を渡した。


「確認完了ですね、では冒険者カードを提示してください。クエストの達成を承認します」


 俺はスッと出した。実は冒険者カードにはちょいと便利な機能があって、名前と冒険者ランク以外は隠すことができる。そのため注意していたレベルバレがなくなったのだ。


「では、これで完了ですね」


「あ、すみません、モンスターを討伐したんですけど」


「え?見当たりませんが?」


「えっと、アイテムボックスなんですけど」


「あ、アイテムボックス持ちでしたか、では私についてきてください」


 受付に言われついていく。そこには肉や皮などが干されており、たぶんだがモンスターを解体する場所なのかもしれない。


「あのナスエさん、モンスターの確認のためにここ使っていいですか?」


「あぁいいぞ、今のところ仕事はないしな」


 どうやらナスエさんと言うそうだ。名前に反して体格のいい体、思いっきり胸などに力を加えれば服が破れそうだ。


「ではここにお願いします」


 そう言われたのでセイヤがアイテムボックスと言って俺達が狩ったゴブリンどもを全部出した。


 途中でえ?!えぇぇぇ?!うぇぇぇぇぇぇぇええ?!!!!!とか大声が聞こえたが気にしない。


「これで全部です」


 二人とも開いた口が塞がらないと言った感じだ。実際ずっと口を開けている。


「す、すごいゴブリンの数ですね、しかもメイジゴブリンにハイゴブリン!しかもキングゴブリンまで?!」


「すげぇ数のゴブリンだな!!長年モンスターの解体をやってきたがこの量のゴブリンを倒してきた冒険者を見たことがねぇ」


 絶賛の嵐、そんなに褒めても、ゴブリンしか出ねぇぞ?


 俺もセイヤも気持ち悪い動きをしながら照れていた。


「しかし、まだ登録して一日目、果たして本当に二人が討伐したのでしょうか?」


 とまさかのここで疑いの目である。確かに怪しいよな。だって営業初日で大手企業と契約を結んだようなもんだ。金でつった可能性もある。


 しかしこれは俺らがやった成果。お金はたぶん結構もらえると思うし、貰いたい。どう証明しようか。


「しょ、初日でこれは疑っちまうわ、そうだな……じゃあゴブリンキングと同等の依頼を受けさせて受付の嬢ちゃんがついていきゃあいいじゃねぇか。そうすればゴブリンキングを倒してなくても倒せる可能性があるだけで信憑性がぐんと上がるし、倒せずに腰抜かして逃げたのなら、これは嘘っぱちってわけだ」


「そうですね、では早急に対応したいので明日にでもいいでしょうか?」


「えぇ大丈夫ですよ」


 ランクは低いままだが金が稼げる可能性大あり!まさかゴブリンキングだけでく、同等のモンスターを狩ることができるのは報酬が弾む。


 失敗する可能性なんて一ミリも考えてない。ゴブリンキング程度のモンスターならいくらでも行ける。


 とりあえず、ゴブリンたちの報酬は保留として、回復草のクエストでもらった大銀貨1枚で止まれそうな宿を探す。


 しかしない、どこも銀貨1枚以上はかかるしこれは野宿の可能性が出てきた。いやだなー。


 こんな夜に歩いていると、少し事件に巻き込まれる。


「あーいてぇ、これ骨折れたわどうすんの」


 いきなりぶつかってきやがったチンピラども。どうやら治療費と言うことで金をせがんできた。


「お前らが先ぶつかったんだろ、あと金ねぇし」


「あ?ちゃんと目ついてんのか?明らかにそっちからだろ、しかも金ねぇとか嘘こきやがって。腰にぶら下げるのは何だよ」


 腰?別に何もないが……あ、そういえばファトムさんからお金貰ってるんだった。なんでこんなに彷徨ってたのか、マジ時間潰したわ。


「トモヤ、早く宿見つけて寝よう」


「そうだな」


 近くの宿に入った。途中ぶつかってきたおっさんの声が聞こえたが全部無視した。

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