第28話 適材適所

俺達は今、クエストの回復草を10個手に入れるために草原に来ている。このクエストは俺達にめちゃくちゃ相性のいいクエストだ。


 俺は探知があるしセイヤは鑑定がある、鑑定は範囲を指定すればその範囲内の全てのものを鑑定できるらしいが、情報量が多そうだ。絶対脳疲れる。


 その点俺は曖昧な命令で回復草のあるところが光ってくれるため超簡単、やはり適材適所ってわけだ。


 とりあえず光ってるやつ全部抜いていった。10個なんて一瞬で終わり、動き足りないまま終わった。アップにすらなっていないため、とりあえず抜きまくった。


「トモヤ……いつまでやるんだ?たぶん200個超えてる」


 呆れ顔で俺に言う。別にいいじゃん!なんか引っこ抜いてるの楽しいし。


 だがさすがに俺の我儘を通すわけにはいかない。


「じゃ、帰るか」


「やっとだ」


 草原と言ってもあまり人が来ない所で、少し森の中を通ってからここにやってきた。ここは回復草が本当に沢山生えているのを探索と探知の重ね技で見つけた。


 帰り道で2体の小人と出会う。たぶん見た目的にもゴブリンだろう。この程度なら俺が刀でやっつけた。そして帰り道を歩んでいるとまたゴブリンと出会う。


 ゴブリンってこんなに出没するのか?と少々の疑問を抱きつつもあまり考えなかった。三度目の邂逅。もう運命なのではと思う。


 さすがにおかしくね?確かに初めての地でこれが当たり前なのかもしれない。であらば回復草がたくさん群生している草原に行く途中で襲われなかったのはなぜだろうと思う。


「さすがにおかしくね?」


「そうだなちょっと調べるか【探索サーチ】」


 たくさんのゴブリンが一つの場所に集まっている。しかも何体か、ゴブリンより結構強い気配を感じる。


「たぶんゴブリンの村?集落?家?があるから、潰さね?」


「いいよぉ」


 会話を見るとめっちゃ軽く見えるだろう、実際そうだ、あの程度のゴブリンがいくら集まったって俺らには絶対に勝てない。さすがに1万とか集められたらわからないがそこまでいない、精々100体で少し強い個体が何体かいるぐらいだ。


 認識阻害をセイヤにもかけてゴブリンにバレないように進んでいく。ゴブリンの元気で何言ってるかわかんない声がたくさん聞こえる。多分ここだろう。


 さらに近づくとゴブリンが何をしているのかわかった。どうやら洞窟を作ってそこを拠点にしようとしているんだろう。大柄で小太りのゴブリンが大きな椅子に座って命令するように普通のゴブリンたちに指揮を執っていた。


 あいつがボスかな?だが弱いことに変わりはない。一撃で殺すのは簡単だ、が、めんどくさい。100体以上いるゴブリンを刀で一撃ずつ殺すのは手間がかかる、魔法をつかったら一発だな、魔法でも使うか。


 俺が結構でかめな雷魔法をぶつけようとして魔力を高める、さすがにセイヤが気付きそれを止めた。


「それやったら消し炭どころか炭まで無くなっちまうだろ、刀じゃ面倒くさそうだし、俺に任せて」


 そう言われたのでセイヤに任せてみた。あいつなら簡単に倒してくれるだろ。


 セイヤの魔力が高まっていくのがわかる、なぜ魔力を高めていくのかと言うと威力の調整や範囲などを調節できるから。スキルで使うよりも精密で強い。


「【土魔法】」


 小さな声で言ったのを俺は逃さなかった。因みにだが土魔法は、あのダンジョンのボスからドロップしたスキルの宝玉でゲットしたスキルのようだ。


 それよりも、セイヤが発動した土魔法でゴブリンが逃げれないように集落の周りに土の壁ができた。


 中は見れないがきっとゴブリンはいきなり現れた土の壁に困惑しているだろう。


 セイヤが俺にこっちこいと言わんばかりに手招きをした。


「今から水魔法で壁の中プールにするから雷魔法使ってくんね」


「よしきた」


 やはり役職が与えられるのはうれしい、因みにだが水魔法もスキルの宝玉だ。


 知っているだろうが、水に雷は相性が良く、伝わりやすい。ゴブリンを水浸しにした後、雷で一発KOってわけだ。


「【水魔法】」


 これでゴブリン浸しのプールの完成、そこにすかさず俺が雷魔法を使う。セイヤみたいにかっこつけるんじゃなく無言で。


 暫く待った後、ゴブリンがぷかぷかと浮かび上がってきた。あの大柄なゴブリンもその一つである。


 それらを回収して冒険者ギルドに持ってくか。大丈夫か知らんけど。


 回収しやすいように気を利かせて、土の壁を下の部分だけ破壊、すると道具たちが水の勢いと共に流れてくる。ゴブリンたちは上に浮かんでいるため流れてこないだろうと思う。


 水が全部なくなったため、セイヤがアイテムボックスでゴブリンの死体どもを回収。前まで斧を入れただけで入らなくなったアイテムボックスが、レベルマックスになったことで入るスペースがいつまでたっても満杯にならないんだそうだ。


 今現在、夕日が差し込んでおり、俺らを赤く染める。もう五時だ。帰ろう。

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