第27話 この展開ねはいはい

 扉を開けるとまるで居酒屋のようにビール片手に騒いでいた。結構想像通りで一安心、受付へと足を進める。


「いらっしゃいませ!依頼ですか?冒険者登録ですか?」


「冒険者登録をお願いします」


「わかりました。少々お待ちください」


 受付の女性がそう言って板を持ってくる。


「こちらは冒険者カードと言い、身分を証明するときや、クエストの受注、達成の証明となります。初めはEランクから始まりD、C、B、AそしてSと下から順になっています。この冒険者ランクは依頼の達成度と数で評価が決まります。基本下がることはありませんが、他の方の依頼を邪魔したり勿論無暗な殺人などを行った場合は冒険者カードの剥奪や冒険者ランクの降下があります。またあまりありませんが、冒険者ランクに対して高位のモンスターを討伐した場合は冒険者ランクの上昇があります。ですが命の危険がある為おすすめはしません。と説明しましたが、銅貨1枚持っていらっしゃいますか?お支払いをお願いします」


 あ、忘れていたんだなとちょっと微笑ましい気がする。


 銀貨二枚を取り出してセイヤの分も払った。やっぱりSランクが一番高いんだな、ファトムさんがSランクなのも頷けるが、あそこまでいかないとSランクになれないとは、中々厳しい世界だなと思う。


「ありがとうございます。そしたら、その冒険者カードに自分の血を流してください。するとステータス画面のような表示がされます、しかし名前と職業とレベルと冒険者ランクだけですので安心してください」


 ちょっとまて、俺はレベルばりばり上げてるから怪しまれないか?大丈夫なのか?セイヤは料理人だからあまりレベルは上がってないし大丈夫だと思うが。俺は冒険者カードに血を流した後そそくさとポケットにしまった。


「質問はありませんか?」


 そういえばパーティーのランクとかってどうなるのか知りたい。セイヤと組むと思うし。


「パーティーについて教えてください」


「あっ、えっとパーティーについてです。個人の冒険者ランクと、パーティーの冒険者ランクは違い、個人でどこまで行ったか、パーティーでどこまで行ったかの基準となります。しかしランクを上げた状態で同ランクの方とパーティーを組む場合はそのランクからのパーティーとなります。また、自分より上のランク、または下のランクの方と組む場合は下のランクからのスタートとなります。」


 忘れていたんだと思う、この受付ちょっとおっちょこちょいと言うか忘れっぽいだろうなと思う。


 特に質問はないしセイヤと共に「ありがとうございます」と言った。


「慣れてくると思うので頑張ってください!あと命が一番ですからね!」


 そして俺達はクエストが張ってあるであろう掲示板にどれを選ぶべきか話し合っていた。するといきなり肩に手が乗って思いっきり引っ張られた。俺が動じずに相手の顔を見る。少し動揺しているが、すぐに舐め切った表情に変わる。


「おこちゃまが来ていいところじゃねぇんだ!さっさと帰って鼻くそでもほじってろ!」


 あ、よくある展開だ。相手は身長も高く、半ズボンに輝かしい肉体を見せたいのか上半身裸である。はっきり言ってミノタウロスの方がムキムキだ。


 こいつぶっ飛ばしていい?とセイヤの方に目をやると、セイヤがボクシングのような腕の動きをしていた。ぶっ飛ばせって相図ですね了解と手でオッケーのサインを作り体だけが成長した常識のない子供に一泡吹かせてやる。


「んぁ?こっち見ろって!なんだビビったのか仲間に助けを求めてんのかy


 ズドン、と体だけ大人をぶっ飛ばした。俺が思いっきり力を出すと体が消滅し真っ直ぐ家などの障害物が消し飛ぶため、結構手加減をした。


 名前も知らない体だけ大人は目は白目で本当に泡を吹き、気絶していた。その光景を見ていた殆どの人たちが拍手を送る。ヒューと口笛も聞こえた。先ほどの受付が


「すごいですね!あのCランク冒険者の人をぶっ飛ばすなんて!そういえばお名前は?」


 最大のドヤ顔と決め顔を同時に作り後世にも語り継がれるのかと言わんばかりのイケイケボイスで言い放った。


「トモヤでぇんす」

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